「君の名は。」ヨタマ作戦part0プロローグ+エピローグ


夏の終わり……。

OO駅頭……。

雑踏の中、蝉の鳴き声が響いている……。

駅前のベンチの端に、所在なげに腰かけている、

どこか垢抜け無い制服を着ている長い髪の少女……。

三葉……。

痛みかけの学生靴の足元に転がっている、乾いた蝉の抜け殻に

眼を落としている……。

その美しく整った後ろ髪には、赤と白の絹糸で編み込まれた組み紐を

輪郭とした蝶が、閑かに羽根を休めていた。

時折、フッと頭を上げ、改札の方を見詰めるが、

再び、うな垂れてしまう……。

数分ごとに発着する電車から、乗客が押し出された行く……。

駅員のアナウンスと車体の軋む音に、少年の、ハァハァという

息遣いが、かぶさる……。

そして、少年のタッタッという、駆ける足音が加わってゆく……。

ブランドのスニーカー、どこか垢抜けたネクタイ姿の制服が、

駅の階段を一気に駆け上がる……。

そのまま改札を抜けようとして、間一髪、中年の男性客と

ぶつかりそうになる……。

「ア……ッ、スイマセン……。

男はチラッと顔をしかめるが、そのまま過ぎ去る……。

少年は、改札を出ると両手を膝に当て、前屈みで息を整えている……。

「イヤーッ、結構キツーッ……!」

同時に、首を左右に回して、誰かを眼で追っていた……。

そして、駅前のベンチの端で、うつむいている少女を見つけると、

少年の表情がパッと明るくなった。

同時に、手を思い切って振りながら、少女に呼びかけた……。

「三葉さーん!! コッチコッチ……!!」

少年は、そのまま小走りで、ベンチの少女の前に立ち、

学生カバンを開けて、何やら取り出そうとした……。

「イヤーッ、間に合わないかと、冷や冷やでしたョ。

エーッと、コレコレッ……!」

少年が取り出したのは、安物の合皮のケースに入れられた

学生証であった。

三葉は、それを手に取り、ジッと見詰めていた……。

美しく整った眉の間に、深い皺が浮かんでいる……。

「ネッ! アッ、それと肝心な、コレッ……!!」

少年は、再び鞄に手を入れ、何かを掴むと、学生証と引き換えに

三葉の手に握らせた……。

単色の紅い絹糸で編み込まれた組み紐が、そこに有った……。

「コレで、約束、守りましたからネッ! アッ、それからノートの日記帳、

チャンと机の上に置いて預かってマスョ。勿論、絶対に読んでマセンから。

アーッ、本当、助かったァー……。」

少年は、ココまで言うと、三葉の表情が一気に雲っている事に気付いた。

三葉の唇の両端は、微かに震えている……。

「 (……エエッ……?) 」

何と言葉を掛けたら良いのか……少年は戸惑うばかりだった。

次の瞬間、三葉は決心したように、少年の手首を左手でギュッと

掴むと同時に、紅い組み紐をその腕に叩き付けた。

反動で組み紐は、少年の腕をクルリと回る。

三葉は、一瞬のスキを捉え、それを結び付けていた……。

少年の腕に、美しい紅い蝶が羽を休めていた……。

「アッ……」 少年は、小さな声をあげた。

しかし、三葉は、もう何も言えない……。

唇の震えは、三葉の肩から腕に広がっていた……。

言葉を紡げば泣き崩れそうになるのを、必死で

こらえていたのだ……。

それでも、勇気を絞って、震える口を開いた……。

「……滝……君……。」

「……滝…君……、私の事……忘れな……」

三葉の声は、余りにか細く、駅前の雑踏の音の中で、

かき消されて行く……。

「……エッ?何ッ?……三葉さん……本当にどうしたンデ……」

少年、いや、滝がココまで尋ねた時、三葉の眼から溢れ落ちた涙が、

紅い蝶の羽根を透かして、滝の腕を叩いた。

その途端、滝はハッとなる……。

三葉が泣いた事に驚いた…のでは無い。

その時、滝は、三葉の心の景色がハッキリと見えたのだ……。

絶望と恐怖の嵐の只中で三葉は泣き叫んでいた……。

そして、三葉の音に成らない叫び声が、滝にはハッキリと聞こえた……。

「……滝……君……!!、滝…君……!!、……私の事……、忘れないで……!!!」

三葉の心が、強く弾かれ震えた時、滝の心も強く震える……。

何故、こんな事が……?

滝には訳が判らない……。

しかし、そんな迷いを一蹴する、信じ難い1つの確信が、

滝の心の底から一気に沸き上がり、言葉と成って、

滝の口から漏れ溢れた……。

「……三葉さん、……君は…誰だッ……?!!」



……これより映画タイトル……



     デヘッ、与太郎ッス。プロローグ、終わりでヤンス。
     続いて、エピローグに飛びヤス。

     アタイ、ズイブン前に、ブログの旦那に

     「ヨタマ作戦」、出来具合はドウですか?って聞いタンスけど、

     「オーッ、任しとけっ!」って言ってヤシタが、

     ヤッパ、任せナキャ良かった……、反省ッス。

     皆様には、大変なご心配とご迷惑を……

               エッ?早く引っ込め?

     どうもスイヤセン……。

     エピローグ、始まりヤス。

……

….


彗星落下から5年……。

晩夏

水宮神社

油蝉からヒグラシの鳴き声に変わってゆく……黄昏時…..。

境内を、静かに箒で掃き清めて居る、白い衣と緋色の袴の巫女…..。

後ろ髪を、緋色の組み紐で蝶の形に結んでいる……。

三葉……。

竹箒が、石畳を払うサラサラという閑かな音の拡がりの向こう、

微かなハァハァという息遣いと、長い石段を急いで登って来る、

確かな足音が近付いて来る……。

石段を登りきり、両手を膝に付け、しばし息を整えている青年。

「イャー、結構キツゥー……!」

青年は顔を上げると、視界に入った三葉の向こうから、声をかける。

肩に下げた大型のバックから、カメラとスケッチブックが顔を

出していた。

「すいません、お社の写真、撮らさして戴けますか?それと、

スケッチ宜しいですか……?」

三葉は黙ったまま、閑かに頷いた。

「ありがとうございます。」

青年は軽く頭を下げ、足早に三葉の傍らを通り過ぎ社殿に

向かおうとした。

そして、三葉が払った箒の視線の先に、青年が肩に下げたバックの

持ち手を右手で持ち直す様が映った。

その刹那、青年の手首に巻かれていた、年代物の赤黒い何物かが、

遂に切れて、落ちかけている事に気づいた。

「アッ、何か落ちま………」

三葉の言葉はココで途絶えた。

何故なら、三葉の眼前には、信じられない光景が広がっているからだ。

地に落ちるハズの物が、スローモーションの様に、宙に漂い始めている。

そして、その動きは更に遅くなってゆく……。

遂に、地に着く前に、ソレは停止した。

次の瞬間、三葉は閑かな衝撃の中に居た。

時間が、止まった?いや、違う!

時間は、確実に、今も流れている。

三葉の、時間に応じる感覚が、一気に、研ぎ澄まされた……。

紐は、三葉の指先、数10cmの空中に浮かんで静止していた。

勿論、三葉の指の動きも視界も、完全に固定していた。

しかし、三葉の意識は、限界を軽々と超え、研ぎ澄まされてゆく……。

そして、三葉は見た……。

光を、いや、光の生まれる瞬間を………。

黄昏の茜色の中、紐の切れた端の繊維の断片の一点が、微かに輝くと

極めて小さな光の粒が現れた……。

すると、四方に極限の細さの光の筋糸を放ちながら、三葉に向かって来る……。

この僅かな間にも、堰を切った様に、次々と様々な色をまとった光の点が

現れては、たちまち光の筋糸を放ち始める……。

その光景の全てが、スローモーションの様に、三葉の眼にハッキリと映った。

種々な色の光線の束は、交差し、重なり合い、混じり合って行く……。

そして、衝突をした光は、一瞬で色を変え、更に繊細な光の綿毛となり、

様々な形を造りながら、閑かに世界に拡がって行く……。

そうした光の粒と筋が三葉に達すると、

ある物は、何も無かったかの様に、三葉の躰を通り抜け、

ある物は、三葉の躰の表面でハネ返り向きを変え、あるいは光の綿毛と成り

周囲に拡がって行った……。

そして、三葉の躰と心を組み立てている全ての要素の、最後の一つが

そうした光の粒と束に出逢った、その瞬間、

プラチナの光のフラッシュが

三葉の全てを包み、貫いた……。

三葉は茫然とするしか、無かった………。

しかし、全ては、「一瞬」が「永遠」に引き延ばされた間に生じた「瞬時」

の出来事であった………。

そして次の瞬間、

三葉の「時間」は、2つの意味で、戻っていた……..。

青年が、三葉の「アッ、何か落ちま……」の声に踵を返し三葉の傍らに

戻って来た。

「イャー、とうとう切れチャイましたか…..。何か良い事でも起き……」

こう言いながら、青年が手を伸ばして、地面に落ちているミサンガを

拾おうとした、その瞬間、

三葉は突然、青年の手首を上から両の手でギュッと掴んだ。

「どッ、ドウしたんですか……?」

三葉は腰を半ば折り、青年の眼を避ける様に、頭を下げた姿勢を崩さない。

驚いている青年に、三葉は下を向いたまま、黙して何も応えない………。

次の瞬間、三葉は決心したように右手を離し、髪を結んでいる赤い

組み紐を解くと、片方の手でギュッと掴んだままの青年の手首に

ムチのように叩きつけ、クルリと反転して戻って来た端を掴むと、

一瞬で結び付けた………。

青年の手首に、美しい赤い紐の蝶が、羽根を休めていた………。

三葉は再び、両手で青年の手首をギュッと掴んだ……。

その指先が、微かに震えている………。

その震えが、指を伝わり、腕から肩に拡がってゆく……

三葉は、怖さに震えていたのだ………。

プラチナの光のフラッシュを浴びた、その一瞬、

三葉の失われた五年の「時間」は戻っていた——。

切れ落ちたミサンガが誰の物で、今、必死で、その腕を

二度と離すまいと、固く掴んでいる青年が誰なのか……。

三葉は全身で確信していた……。

この手を離せば、再び青年は二度と戻って来ない………。

三葉は不安と怖れが吹き荒ぶ暗闇の嵐の中で、もがくしか

無かった……。

三葉の眼には、涙で霞んだ石畳の地面が映っていた….。

顔すら挙げられない……。

唇の端が小刻みに震えている……。

ひと言でも発すれば、その場に泣き崩れてしまうのは明らかだった。

それでも三葉は、全身の有りったけの勇気を絞って、唇をギュッと

噛み締めて、途切れ途切れに、必死で言葉を紡ぐのだった……。

「……滝………君………。」

「……滝……君………。」

「……私の事………、…..覚えて………」

ここ迄で精一杯だった……。

これ以上眼を開けていては、泣き崩れる……。

大粒の涙が、滝の手首の赤い蝶の透ける羽根に

滴り落ちた……。

三葉が眼を閉ざし、文字通りの闇の嵐の中に、再び身を

委ねようとした、その瞬間………、

青年の腕を掴んだまま、小刻みに震えている掌に

三葉は、暖かい何かを感じた……。

その暖かさは、硬く凍え冷え切っていた三葉の心と躰に、

一瞬で染み渡った。そして、又、温かい何かが……。

闇の嵐は、閑かに光に払われ、姿を消して行った……。

三葉は、暖かい光の繭玉の中で目覚めようとしている………。

三葉は閉じていた眼を開けると、うつむいていた顔を、

青年の方に、ゆっくりと挙げて行った………。

その唇から震えは消えていた……。

三葉の視界に、青年の腕が、胸が映し出され、そして、

微笑を浮かべた唇が映った、その時………、

青年の口元が微かに動いた。

それは空気を暖かく震わせ、三葉の心と躰を優しく

抱きしめていた………。

「……三葉…………。…….忘れないよ……..、君の……名前……….。」

黄昏の茜色の光が二人を包み、長い影法師は交わり、

一つになっている。







(側役人) 御無沙汰してオリマス。側役人デス。

エーッ、本来は、ココで「オシマイ」ナノでアリマスが、

そうトハ参りマセヌ。

よく見て下さい。「……一つになっていた。」ではアリマセン。

よく見て下さい。「……一つになっている。」のデス。

私、細かい事が気になるタチでして、

「いた。」なら無事、終わりナノでアリマス。

しかし、ソウでは無い!

ソウ、「続き」がアルノデス。

エーッ、私は、勿論、反対したノデありますが、

コレは、あくまで「ヨタマ作戦」、即ち、かの与太郎が、

頭をヒネッテ作りし物。オマケがゴザイマス。

御奉行様も「アルがママで良い。」との事、

以下、ノーカット完全版をお届けシマス。

ですから、これから先は、別世界。

気分を害す方もイラッシャルでしょうし、又、コレ迄、

気分を害されていた方には、福音となるヤも知れマセヌ。

エーッ、兎にも角にも、私の責任ではアリマセンので、

何卒、宜しく、お引き立て、願い奉りマス………。

(エッ? 拙者の出番はコレ迄? ソーナノデスカ、

オツカレ様デシタ。アッ、又、ウツッタ!)





三葉と滝が「二人だけの世界」に没入している、その最中……、

先刻、滝が登って来た、水宮神社の長い石段の遥か下から、

「節回し?」が有る様な無い様な、一連の「文句」が、

ドスン、ドスンという足音を引き連れて、近づいて来た………。

「歌?」と思われた方もイラッシャルかと存じマスが、

断じて、ソーでは有りマセヌ。

「百聞は一見、イヤ、一聞に如かず」でアリマス。

実際に、その「文句」をお聞き頂きまショウ。

「アッタマ来る来る、頭クルっ!アンナ野郎に告(コク)られるッチャー

自分で自分をケナシてヤリてぇー!バカでマヌケでオッチョコでぇー!

テメェー、バカヤロ、コノヤロ、チキショー!

もう一発、喰らわせトキャ良かったカナカナカナのヒグラシ様デェー!

ヨーッシャ、明日、一発、カマシタれーっ!!」

とか何とか、辺り構わず大きな声を震わせ、学生鞄を振り子として

リズムを取りながら、一段飛びで長い石段をドスンドスンと

駆け登って来る何者か……。

そして、早くも、最上段近くに差し掛かると、その頭だけが、

神社の石畳の端から、顔を出した……。

その眼は、獣の様にギラギラとし、目聡く三葉と青年の姿を捕らえるヤ

一瞬、動きがフリーズし、小声が洩れた……、

「 (….アッ…!!)」

しかし、その直後には、凄まじい勢いで石段を登り切るヤ石畳の端には、

夕陽の逆光を浴びた全身のシルエットが浮かび上がっていた………。

それは、間違えようも無い、学生鞄を片手に下げたセーラー服姿の三葉

だった……ではナイ、顔形はOO姉の完璧なコピーである、中坊の、

四葉でアッタ……。

そして、次の瞬間、凄まじい「ウォーッ!!」という雄叫び(オタケビ)、

イヤ、雌叫び(メタケビ)を挙げるや、学生鞄を空中高くほうり投げ、

一気に、青年に向かって駆け出した……。

青年と三葉の二人だけの世界を護っているバリアは、

先の雌叫び(メタケビ)で、早くもヒビが入り、

続く音響攻撃に、脆くも全て瓦解した………。

「ウォーッ!! 滝兄(タキニィ)ダッ!! 滝兄ダッ!!、

アタイの、大事な大事な大事な、滝兄ダァーッ!!」

投げた鞄が、ユックリと回転しながら、放物線を描いて地に着く前に、

四葉は既に滝の背後に迫っていた。そして、鞄が地に着くのと、

四葉が滝の背中に飛び付き、強制オンブしたノが、同時でアッタ……。

「アーッ、本当に!!本物の!!滝兄ダッ—-!!アリガトねっ!!アリガトねっ!!

本当に、アリガトねっー!!」

四葉は、両足を滝の胴の前でガッチリと組み合わせ、フリーな両手で

滝の顔を挟むと、顔と言わず、首と言わず、頭と言わず、

キスの、雨を降らした。

そのドシャ降りが、一瞬、止んだ……。

四葉は、滝の口元を、いや、唇をジッと見つめてイタ……。

「イイや、戴いチャエッ!」

滝の唇に、四葉が自分の唇を無理矢理ヒッツケようとシタ、その途端、

何者かが、ソレを遮った……。

「四坊(ヨツボウ)、ソコは三葉の姉ヤンに、取っといて挙げナキャ

いけネェーや……。」

文字通り、声はすれども、姿は無かった………。

しかし、四葉の口元は、何者かの見えざる手によって、猿ぐつわの様に

塞がれていた……。

「……放せッ!!バッカ野郎ッ….!オセッカイすんナッ!!噛むゾッ!!」

四葉は、見えざる何者かが、判っている様な、口振りデアル……。

「痛テテ….、本当に噛みヤガッタ……。四坊は、マダマダ、

お子チャマだネェー…..。」

次の瞬間、四葉の躰は、滝の背中から引っ剥がサレルと、

子犬の様に、地面に転がっていた……。

「痛テェーじゃネェーか!! このバカッ!!」

四葉は、言葉の終わる前には既に立ち上がって、滝に向かって

突進していた……。

しかし、又もや、見えざる何者かが、四葉の前に、立ち塞がった……。

「だから、ドケやがれッテ、言ってンだっ!!」

「マァマァ、四坊、クールダウン、クールダウン……。」

「ウルセェーッ、いつも四坊、四坊、言いヤガッテ!

アタイは、坊ヤじゃネェーや。レッキとした、お嬢ちゃんデェー!!」

「オヤオヤ、ソレは勘弁ナッ! だけど四坊….、

アッ! 又、言っチャった……。」

「だから、坊やジャねぇッテ、このバカタレッ……!!」

四葉は、姿の無い何者かに向かって、ワメいてイタかと思いきや、

ソウではナイ………。

滝と四葉の間の空宙に、両手を広げた透明な人形(ヒトガタ)の輪郭が

フーッと浮かび上がったノダ………。

ソレは、急速に半透明に移行し、見る見るうちに、実体を現して行く

………。

そして、粋な縞模様の着流しの後ろ姿が、浮かび上がる、その間際、

その背中に、満開の桜が風吹き散る絵姿が有るのを、

滝は、見逃さなかった!!

「アッ!! 御奉行様……!!」

滝の言葉が終わる迄には、滝の目の前に、粋な縞柄と腕と度胸を

纏った、凛々しい男の後ろ姿が有った。

男は、振り返ると……、

「……何デェー、オイラの事も、一緒に想い出しチマッタのカイ……!

こりゃ、いけネェーや。奉行所の記憶除去班の連中は、全員、

お灸モンダョ!原因究明する迄、オヤツは抜きダナ……!」

(以下、掛け合いに成りマス。)

滝 「……御奉行様……何で、ココに……?」

奉行 「そりゃー、滝兄の行末が心配じゃネェーカイ、って言いたい

  所だが、ソーじゃネェーや。

  オイラ、この四坊を迎えに来たんダヨ。

  実は、オイラと四坊は、もう三度もバディを組んで、“事件”を

  解決してイルんダヨ。

  ソレも、とんでもネェー、アッチャラ、コッチャラでネッ!!

  ソレで、今度も神社の石段の登り口で、四坊を待ってタラ、

  やっとこさ、現れるなり、トンでもネェー歌ぁーガナリ立てて、

  アンマシ面白レェーから後付いて来たら、サッキのザマさ。

  だけどネッ、アンマシ時間もネェーンダ。

  四坊、借りてくカラ、滝兄、後の事ァ頼んダゼ!」

滝 「……頼むッテ言われテモ……。」

奉行 「野暮言ってンじゃネェーょ、滝兄ョ。」

ココで、奉行は、何が何だか判らず、呆然としてイル三葉に

声を掛けた……。

奉行 「三葉チャン、ビックリさせて、勘弁ナッ!

  オイラの事ァ、この滝兄から聞いとくれ!

  それから、四坊とオイラの事に付いチャぁ、

  四坊が戻って来てから、本人が話すダローょ。

  心配イラネェー、四坊は、無事にコノ場所、ッテカ

  コノ時間のコノ場所に、必ず戻すカラ……。」

三葉 「……御奉行様……で宜しかったでショウか?……貴方と

     四葉は……、マサカ………入れ替わり……?!!」

奉行 「オッ! さすが三葉チャン! 宜しかったデスョ。

  半分、当たり。デモ、半分、外れダネ。

  入れ替わりニューバージョン。

  互いの躰に、時空を超えて、出入り自由。

  早ェー話、四坊の躰にオイラが入ったとスルョ。

  ビックリしちゃ行けネェーョ。

  四坊の意識は、残っているコトが出来るんダゼ!

  ソレも、自由な割合で。

  共同生活なら、半分コ、端ッコは、100%オイラか、

  100%四坊、オイラ30%四坊70%もアリマスョ。

  だからネ、ココに四坊が居ても、その実体(意識)は

    ①オイラの場合もアリャ、

  (コン時ャ、四坊は、0%だけど、居無いンじゃネェー、

  完全に隠れんぼシテルンだよネ。いざッテ時ャパッと現れて、

  オイラをガブッと噛み付く事も出来るから、オッカネェーんダヨ。)

  ②そして、オイラと四坊の半分同居の場合も、

  ③それから、(オイラが隠れんぼシテる)四坊の場合も有るンダヨね。

  ソレとネェ、三葉チャンと滝兄は、入れ替わると、同時に同じ場所

  にはマズ、居られネェーだろう?

  オイラ達は自由に出来るンダヨ。

  ソレにサァー、二人が合体してる時ャ、身体能力も、頭(オツム

  の脳力もスーパーアップ。

  1+1=2 どころか 1+1=11 てな訳ョ。

  スーパーヒーローの誕生。

  それも、四坊バージョンとオイラバージョンの二人。

  コノややっこしい、シッチャカメッチャカのコンビが、

  アチャラコチャラで、ややっこしい“事件”を、もう三度も

  ヤヤコシク解決して来たッテ訳ョ。」

奉行は、ココまで話すと、今度は四葉に向かって

奉行 「四坊、待たせたナッ、それじゃ、行こうか?」

四葉 「イヤでぇー!! アタイは金輪際、バカ金となんか

   ドコだって、絶対に行かネェーャィ!!」

奉行 「相変わらずの、オ子チャマ駄々ッ子ダネェー、四坊は。」

四葉 「二度と言わネェーぞ、バカ金!! アタイは坊ヤじゃネェー、

   お嬢ちゃんデェーッ!!」

奉行 「オーッ、度々、悪う御座ンシタ。しかし、で御座イマスよ、

   お嬢様、今回の“事件”は、幕末、それも四坊お気に入りの、

   坂本龍馬がらみの……」

四葉 「じゃ、アタイ行くッ!!」

奉行、滝と三葉に向かって、

奉行 「滝兄よ、こんな訳で、四坊の事ァ、オイラに任せろ。

   で、三葉チャンの事ァ、滝兄、オヌシに任せたゾ!!

   大丈夫ダヨ。自信、持ちな!!

   何しろ、お前ェーさんは、三葉チャンの為に、一度は

   死んだ身ダッ!そして、三葉チャンも滝兄を救い出す為、

   三年の辛苦に耐えた……。

   コノ事ァ、OO奉行所の中でも、モッパラの語り草ダゼ!

   ……オッとイケネェー、もうコンナ時間ダッ!

        それじゃ、四坊、借りてくゼッ!!」

奉行、四葉に向かって、

奉行 「それじゃ、いつも通り、合体してジャンプだぜ。イイかい?」

四葉 「オーよっ!!」

言うが速いか、四葉は奉行の方に一気に駆け寄ったか、に見えたが、

その姿は、瞬く間に、煙のように消え、奉行独りが残っていた……。

しかし、その躰は、今迄とは別人の「気」で満ちてイタ……。

奉行-四葉 「滝兄、三葉、それじゃァ、アバヨ!!」

……その声には、奉行と四葉の二人の響きが、明らかに有った………。

そして、煙のように立ち消えて行く奉行………。

寄り添って立ちつくす、滝と三葉の二人の影法師は、

更に長く延びていた。

黄昏の赤い残照が、最期の輝きを放ち、神社の石畳に放り残された

四葉の鞄の口金を射て、一瞬、プラチナに眩しく輝いた、その時……。

鞄の持ち手を掴もうとシテイル、人影の様な物が、フーッと現れた……。

見る間に、鞄は地面を離れ、宙に浮かぶ……。と、瞬く間に、右手に

鞄を下げた、人の姿が現れた………。

………四葉? イヤ、四葉だッ……!!

その顔と服は、泥と埃と汗で汚れてイル……。

「滝兄、姉ヤン、タダイマ。アーッ、腹減った…..。何か喰わせろ!!」



「君の名は。」ヨタマ作戦part2エピローグ

彗星落下から5年……。

晩夏

水宮神社

油蝉からヒグラシの鳴き声に変わってゆく……黄昏時…..。

境内を、静かに箒で掃き清めて居る、白い衣と緋色の袴の巫女…..。

後ろ髪を、緋色の組み紐で蝶の形に結んでいる……。

三葉……。

竹箒が、石畳を払うサラサラという閑かな音の拡がりの向こう、

微かなハァハァという息遣いと、長い石段を急いで登って来る、

確かな足音が近付いて来る……。

石段を登りきり、両手を膝に付け、しばし息を整えている青年。

「イャー、結構キツゥー……!」

青年は顔を上げると、視界に入った三葉の向こうから、声をかける。

肩に下げた大型のバックから、カメラとスケッチブックが顔を

出していた。

「すいません、お社の写真、撮らさして戴けますか?それと、

スケッチ宜しいですか……?」

三葉は黙ったまま、閑かに頷いた。

「ありがとうございます。」

青年は軽く頭を下げ、足早に三葉の傍らを通り過ぎ社殿に

向かおうとした。

そして、三葉が払った箒の視線の先に、青年が肩に下げたバックの

持ち手を右手で持ち直す様が映った。

その刹那、青年の手首に巻かれていた、年代物の赤黒い何物かが、

遂に切れて、落ちかけている事に気づいた。

「アッ、何か落ちま………」

三葉の言葉はココで途絶えた。

何故なら、三葉の眼前には、信じられない光景が広がっているからだ。

地に落ちるハズの物が、スローモーションの様に、宙に漂い始めている。

そして、その動きは更に遅くなってゆく……。

遂に、地に着く前に、ソレは停止した。

次の瞬間、三葉は閑かな衝撃の中に居た。

時間が、止まった?いや、違う!

時間は、確実に、今も流れている。

三葉の、時間に応じる感覚が、一気に、研ぎ澄まされた……。

紐は、三葉の指先、数10cmの空中に浮かんで静止していた。

勿論、三葉の指の動きも視界も、完全に固定していた。

しかし、三葉の意識は、限界を軽々と超え、研ぎ澄まされてゆく……。

そして、三葉は見た……。

光を、いや、光の生まれる瞬間を………。

黄昏の茜色の中、紐の切れた端の繊維の断片の一点が、微かに輝くと

極めて小さな光の粒が現れた……。

すると、四方に極限の細さの光の筋糸を放ちながら、三葉に向かって来る……。

この僅かな間にも、堰を切った様に、次々と様々な色をまとった光の点が

現れては、たちまち光の筋糸を放ち始める……。

その光景の全てが、スローモーションの様に、三葉の眼にハッキリと映った。

種々な色の光線の束は、交差し、重なり合い、混じり合って行く……。

そして、衝突をした光は、一瞬で色を変え、更に繊細な光の綿毛となり、

様々な形を造りながら、閑かに世界に拡がって行く……。

そうした光の粒と筋が三葉に達すると、

ある物は、何も無かったかの様に、三葉の躰を通り抜け、

ある物は、三葉の躰の表面でハネ返り向きを変え、あるいは光の綿毛と成り

周囲に拡がって行った……。

そして、三葉の躰と心を組み立てている全ての要素の、最後の一つが

そうした光の粒と束に出逢った、その瞬間、

プラチナの光のフラッシュが

三葉の全てを包み、貫いた……。

三葉は茫然とするしか、無かった………。

しかし、全ては、「一瞬」が「永遠」に引き延ばされた間に生じた「瞬時」

の出来事であった………。

そして次の瞬間、

三葉の「時間」は、2つの意味で、戻っていた……..。

青年が、三葉の「アッ、何か落ちま……」の声に踵を返し三葉の傍らに

戻って来た。

「イャー、とうとう切れチャイましたか…..。何か良い事でも起き……」

こう言いながら、青年が手を伸ばして、地面に落ちているミサンガを

拾おうとした、その瞬間、

三葉は突然、青年の手首を上から両の手でギュッと掴んだ。

「どッ、ドウしたんですか……?」

三葉は腰を半ば折り、青年の眼を避ける様に、頭を下げた姿勢を崩さない。

驚いている青年に、三葉は下を向いたまま、黙して何も応えない………。

次の瞬間、三葉は決心したように右手を離し、髪を結んでいる赤い

組み紐を解くと、片方の手でギュッと掴んだままの青年の手首に

ムチのように叩きつけ、クルリと反転して戻って来た端を掴むと、

一瞬で結び付けた………。

青年の手首に、美しい赤い紐の蝶が、羽根を休めていた………。

三葉は再び、両手で青年の手首をギュッと掴んだ……。

その指先が、微かに震えている………。

その震えが、指を伝わり、腕から肩に拡がってゆく……

三葉は、怖さに震えていたのだ………。

プラチナの光のフラッシュを浴びた、その一瞬、

三葉の失われた五年の「時間」は戻っていた——。

切れ落ちたミサンガが誰の物で、今、必死で、その腕を

二度と離すまいと、固く掴んでいる青年が誰なのか……。

三葉は全身で確信していた……。

この手を離せば、再び青年は二度と戻って来ない………。

三葉は不安と怖れが吹き荒ぶ暗闇の嵐の中で、もがくしか

無かった……。

三葉の眼には、涙で霞んだ石畳の地面が映っていた….。

顔すら挙げられない……。

唇の端が小刻みに震えている……。

ひと言でも発すれば、その場に泣き崩れてしまうのは明らかだった。

それでも三葉は、全身の有りったけの勇気を絞って、唇をギュッと

噛み締めて、途切れ途切れに、必死で言葉を紡ぐのだった……。

「……滝………君………。」

「……滝……君………。」

「……私の事………、…..覚えて………」

ここ迄で精一杯だった……。

これ以上眼を開けていては、泣き崩れる……。

大粒の涙が、滝の手首の赤い蝶の透ける羽根に

滴り落ちた……。

三葉が眼を閉ざし、文字通りの闇の嵐の中に、再び身を

委ねようとした、その瞬間………、

青年の腕を掴んだまま、小刻みに震えている掌に

三葉は、暖かい何かを感じた……。

その暖かさは、硬く凍え冷え切っていた三葉の心と躰に、

一瞬で染み渡った。そして、又、温かい何かが……。

闇の嵐は、閑かに光に払われ、姿を消して行った……。

三葉は、暖かい光の繭玉の中で目覚めようとしている………。

三葉は閉じていた眼を開けると、うつむいていた顔を、

青年の方に、ゆっくりと挙げて行った………。

その唇から震えは消えていた……。

三葉の視界に、青年の腕が、胸が映し出され、そして、

微笑を浮かべた唇が映った、その時………、

青年の口元が微かに動いた。

それは空気を暖かく震わせ、三葉の心と躰を優しく

抱きしめていた………。

「……三葉…………。…….忘れないよ……..、君の……名前……….。」

黄昏の茜色の光が二人を包み、長い影法師は交わり、

一つになっている。

(側役人) 御無沙汰してオリマス。側役人デス。

エーッ、本来は、ココで「オシマイ」ナノでアリマスが、

そうトハ参りマセヌ。

よく見て下さい。「……一つになっていた。」ではアリマセン。

よく見て下さい。「……一つになっている。」のデス。

私、細かい事が気になるタチでして、

「いた。」なら無事、終わりナノでアリマス。

しかし、ソウでは無い!

ソウ、「続き」がアルノデス。

エーッ、私は、勿論、反対したノデありますが、

コレは、あくまで「ヨタマ作戦」、即ち、かの与太郎が、

頭をヒネッテ作りし物。オマケがゴザイマス。

御奉行様も「アルがママで良い。」との事、

以下、ノーカット完全版をお届けシマス。

ですから、これから先は、別世界。

気分を害す方もイラッシャルでしょうし、又、コレ迄、

気分を害されていた方には、福音となるヤも知れマセヌ。

エーッ、兎にも角にも、私の責任ではアリマセンので、

何卒、宜しく、お引き立て、願い奉りマス………。

(エッ? 拙者の出番はコレ迄? ソーナノデスカ、

オツカレ様デシタ。アッ、又、ウツッタ!)

三葉と滝が「二人だけの世界」に没入している、その最中……、

先刻、滝が登って来た、水宮神社の長い石段の遥か下から、

「節回し?」が有る様な無い様な、一連の「文句」が、

ドスン、ドスンという足音を引き連れて、近づいて来た………。

「歌?」と思われた方もイラッシャルかと存じマスが、

断じて、ソーでは有りマセヌ。

「百聞は一見、イヤ、一聞に如かず」でアリマス。

実際に、その「文句」をお聞き頂きまショウ。

「アッタマ来る来る、頭クルっ!アンナ野郎に告(コク)られるッチャー

自分で自分をケナシてヤリてぇー!バカでマヌケでオッチョコでぇー!

テメェー、バカヤロ、コノヤロ、チキショー!

もう一発、喰らわせトキャ良かったカナカナカナのヒグラシ様デェー!

ヨーッシャ、明日、一発、カマシタれーっ!!」

とか何とか、辺り構わず大きな声を震わせ、学生鞄を振り子として

リズムを取りながら、一段飛びで長い石段をドスンドスンと

駆け登って来る何者か……。

そして、早くも、最上段近くに差し掛かると、その頭だけが、

神社の石畳の端から、顔を出した……。

その眼は、獣の様にギラギラとし、目聡く三葉と青年の姿を捕らえるヤ

一瞬、動きがフリーズし、小声が洩れた……、

「 (….アッ…!!)」

しかし、その直後には、凄まじい勢いで石段を登り切るヤ石畳の端には、

夕陽の逆光を浴びた全身のシルエットが浮かび上がっていた………。

それは、間違えようも無い、学生鞄を片手に下げたセーラー服姿の三葉

だった……ではナイ、顔形はOO姉の完璧なコピーである、中坊の、

四葉でアッタ……。

そして、次の瞬間、凄まじい「ウォーッ!!」という雄叫び(オタケビ)、

イヤ、雌叫び(メタケビ)を挙げるや、学生鞄を空中高くほうり投げ、

一気に、青年に向かって駆け出した……。

青年と三葉の二人だけの世界を護っているバリアは、

先の雌叫び(メタケビ)で、早くもヒビが入り、

続く音響攻撃に、脆くも全て瓦解した………。

「ウォーッ!! 滝兄(タキニィ)ダッ!! 滝兄ダッ!!、

アタイの、大事な大事な大事な、滝兄ダァーッ!!」

投げた鞄が、ユックリと回転しながら、放物線を描いて地に着く前に、

四葉は既に滝の背後に迫っていた。そして、鞄が地に着くのと、

四葉が滝の背中に飛び付き、強制オンブしたノが、同時でアッタ……。

「アーッ、本当に!!本物の!!滝兄ダッ—-!!アリガトねっ!!アリガトねっ!!

本当に、アリガトねっー!!」

四葉は、両足を滝の胴の前でガッチリと組み合わせ、フリーな両手で

滝の顔を挟むと、顔と言わず、首と言わず、頭と言わず、

キスの、雨を降らした。

そのドシャ降りが、一瞬、止んだ……。

四葉は、滝の口元を、いや、唇をジッと見つめてイタ……。

「イイや、戴いチャエッ!」

滝の唇に、四葉が自分の唇を無理矢理ヒッツケようとシタ、その途端、

何者かが、ソレを遮った……。

「四坊(ヨツボウ)、ソコは三葉の姉ヤンに、取っといて挙げナキャ

いけネェーや……。」

文字通り、声はすれども、姿は無かった………。

しかし、四葉の口元は、何者かの見えざる手によって、猿ぐつわの様に

塞がれていた……。

「……放せッ!!バッカ野郎ッ….!オセッカイすんナッ!!噛むゾッ!!」

四葉は、見えざる何者かが、判っている様な、口振りデアル……。

「痛テテ….、本当に噛みヤガッタ……。四坊は、マダマダ、

お子チャマだネェー…..。」

次の瞬間、四葉の躰は、滝の背中から引っ剥がサレルと、

子犬の様に、地面に転がっていた……。

「痛テェーじゃネェーか!! このバカッ!!」

四葉は、言葉の終わる前には既に立ち上がって、滝に向かって

突進していた……。

しかし、又もや、見えざる何者かが、四葉の前に、立ち塞がった……。

「だから、ドケやがれッテ、言ってンだっ!!」

「マァマァ、四坊、クールダウン、クールダウン……。」

「ウルセェーッ、いつも四坊、四坊、言いヤガッテ!

アタイは、坊ヤじゃネェーや。レッキとした、お嬢ちゃんデェー!!」

「オヤオヤ、ソレは勘弁ナッ! だけど四坊….、

アッ! 又、言っチャった……。」

「だから、坊やジャねぇッテ、このバカタレッ……!!」

四葉は、姿の無い何者かに向かって、ワメいてイタかと思いきや、

ソウではナイ………。

滝と四葉の間の空宙に、両手を広げた透明な人形(ヒトガタ)の輪郭が

フーッと浮かび上がったノダ………。

ソレは、急速に半透明に移行し、見る見るうちに、実体を現して行く

………。

そして、粋な縞模様の着流しの後ろ姿が、浮かび上がる、その間際、

その背中に、満開の桜が風吹き散る絵姿が有るのを、

滝は、見逃さなかった!!

「アッ!! 御奉行様……!!」

滝の言葉が終わる迄には、滝の目の前に、粋な縞柄と腕と度胸を

纏った、凛々しい男の後ろ姿が有った。

男は、振り返ると……、

「……何デェー、オイラの事も、一緒に想い出しチマッタのカイ……!

こりゃ、いけネェーや。奉行所の記憶除去班の連中は、全員、

お灸モンダョ!原因究明する迄、オヤツは抜きダナ……!」

(以下、掛け合いに成りマス。)

滝 「……御奉行様……何で、ココに……?」

奉行 「そりゃー、滝兄の行末が心配じゃネェーカイ、って言いたい

  所だが、ソーじゃネェーや。

  オイラ、この四坊を迎えに来たんダヨ。

  実は、オイラと四坊は、もう三度もバディを組んで、“事件”を

  解決してイルんダヨ。

  ソレも、とんでもネェー、アッチャラ、コッチャラでネッ!!

  ソレで、今度も神社の石段の登り口で、四坊を待ってタラ、

  やっとこさ、現れるなり、トンでもネェー歌ぁーガナリ立てて、

  アンマシ面白レェーから後付いて来たら、サッキのザマさ。

  だけどネッ、アンマシ時間もネェーンダ。

  四坊、借りてくカラ、滝兄、後の事ァ頼んダゼ!」

滝 「……頼むッテ言われテモ……。」

奉行 「野暮言ってンじゃネェーょ、滝兄ョ。」

ココで、奉行は、何が何だか判らず、呆然としてイル三葉に

声を掛けた……。

奉行 「三葉チャン、ビックリさせて、勘弁ナッ!

  オイラの事ァ、この滝兄から聞いとくれ!

  それから、四坊とオイラの事に付いチャぁ、

  四坊が戻って来てから、本人が話すダローょ。

  心配イラネェー、四坊は、無事にコノ場所、ッテカ

  コノ時間のコノ場所に、必ず戻すカラ……。」

三葉 「……御奉行様……で宜しかったでショウか?……貴方と

      四葉は……、マサカ………入れ替わり……?!!」

奉行 「オッ! さすが三葉チャン! 宜しかったデスョ。

  半分、当たり。デモ、半分、外れダネ。

  入れ替わりニューバージョン。

  互いの躰に、時空を超えて、出入り自由。

  早ェー話、四坊の躰にオイラが入ったとスルョ。

  ビックリしちゃ行けネェーョ。

  四坊の意識は、残っているコトが出来るんダゼ!

  ソレも、自由な割合で。

  共同生活なら、半分コ、端ッコは、100%オイラか、

  100%四坊、オイラ30%四坊70%もアリマスョ。

  だからネ、ココに四坊が居ても、その実体(意識)は

     ①オイラの場合もアリャ、

  (コン時ャ、四坊は、0%だけど、居無いンじゃネェー、

  完全に隠れんぼシテルンだよネ。いざッテ時ャパッと現れて、

  オイラをガブッと噛み付く事も出来るから、オッカネェーんダヨ。)

  ②そして、オイラと四坊の半分同居の場合も、

  ③それから、(オイラが隠れんぼシテる)四坊の場合も有るンダヨね。

  ソレとネェ、三葉チャンと滝兄は、入れ替わると、同時に同じ場所

  にはマズ、居られネェーだろう?

  オイラ達は自由に出来るンダヨ。

  ソレにサァー、二人が合体してる時ャ、身体能力も、頭(オツム

  の脳力もスーパーアップ。

  1+1=2 どころか 1+1=11 てな訳ョ。

  スーパーヒーローの誕生。

  それも、四坊バージョンとオイラバージョンの二人。

  コノややっこしい、シッチャカメッチャカのコンビが、

  アチャラコチャラで、ややっこしい“事件”を、もう三度も

  ヤヤコシク解決して来たッテ訳ョ。」

奉行は、ココまで話すと、今度は四葉に向かって

奉行 「四坊、待たせたナッ、それじゃ、行こうか?」

四葉 「イヤでぇー!! アタイは金輪際、バカ金となんか

   ドコだって、絶対に行かネェーャィ!!」

奉行 「相変わらずの、オ子チャマ駄々ッ子ダネェー、四坊は。」

四葉 「二度と言わネェーぞ、バカ金!! アタイは坊ヤじゃネェー、

   お嬢ちゃんデェーッ!!」

奉行 「オーッ、度々、悪う御座ンシタ。しかし、で御座イマスよ、

   お嬢様、今回の“事件”は、幕末、それも四坊お気に入りの、

   坂本龍馬がらみの……」

四葉 「じゃ、アタイ行くッ!!」

奉行、滝と三葉に向かって、

奉行 「滝兄よ、こんな訳で、四坊の事ァ、オイラに任せろ。

   で、三葉チャンの事ァ、滝兄、オヌシに任せたゾ!!

   大丈夫ダヨ。自信、持ちな!!

   何しろ、お前ェーさんは、三葉チャンの為に、一度は

   死んだ身ダッ!そして、三葉チャンも滝兄を救い出す為、

   三年の辛苦に耐えた……。

   コノ事ァ、OO奉行所の中でも、モッパラの語り草ダゼ!

   ……オッとイケネェー、もうコンナ時間ダッ!

         それじゃ、四坊、借りてくゼッ!!」

奉行、四葉に向かって、

奉行 「それじゃ、いつも通り、合体してジャンプだぜ。イイかい?」

四葉 「オーよっ!!」

言うが速いか、四葉は奉行の方に一気に駆け寄ったか、に見えたが、

その姿は、瞬く間に、煙のように消え、奉行独りが残っていた……。

しかし、その躰は、今迄とは別人の「気」で満ちてイタ……。

奉行-四葉 「滝兄、三葉、それじゃァ、アバヨ!!」

……その声には、奉行と四葉の二人の響きが、明らかに有った………。

そして、煙のように立ち消えて行く奉行………。

寄り添って立ちつくす、滝と三葉の二人の影法師は、

更に長く延びていた。

黄昏の赤い残照が、最期の輝きを放ち、神社の石畳に放り残された

四葉の鞄の口金を射て、一瞬、プラチナに眩しく輝いた、その時……。

鞄の持ち手を掴もうとシテイル、人影の様な物が、フーッと現れた……。

見る間に、鞄は地面を離れ、宙に浮かぶ……。と、瞬く間に、右手に

鞄を下げた、人の姿が現れた………。

………四葉? イヤ、四葉だッ……!!

その顔と服は、泥と埃と汗で汚れてイル……。

「滝兄、姉ヤン、タダイマ。アーッ、腹減った…..。何か喰わせろ!!」

「君の名は。」ヨタマ作戦part1プロローグ

夏の終わり……。

OO駅頭……。

雑踏の中、蝉の鳴き声が響いている……。

駅前のベンチの端に、所在なげに腰かけている、

どこか垢抜け無い制服を着ている長い髪の少女……。

三葉……。

痛みかけの学生靴の足元に転がっている、乾いた蝉の抜け殻に

眼を落としている……。

その美しく整った後ろ髪には、赤と白の絹糸で編み込まれた組み紐を

輪郭とした蝶が、閑かに羽根を休めていた。

時折、フッと頭を上げ、改札の方を見詰めるが、

再び、うな垂れてしまう……。

数分ごとに発着する電車から、乗客が押し出された行く……。

駅員のアナウンスと車体の軋む音に、少年の、ハァハァという

息遣いが、かぶさる……。

そして、少年のタッタッという、駆ける足音が加わってゆく……。

ブランドのスニーカー、どこか垢抜けたネクタイ姿の制服が、

駅の階段を一気に駆け上がる……。

そのまま改札を抜けようとして、間一髪、中年の男性客と

ぶつかりそうになる……。

「ア……ッ、スイマセン……。

男はチラッと顔をしかめるが、そのまま過ぎ去る……。

少年は、改札を出ると両手を膝に当て、前屈みで息を整えている……。

「イヤーッ、結構キツーッ……!」

同時に、首を左右に回して、誰かを眼で追っていた……。

そして、駅前のベンチの端で、うつむいている少女を見つけると、

少年の表情がパッと明るくなった。

同時に、手を思い切って振りながら、少女に呼びかけた……。

「三葉さーん!! コッチコッチ……!!」

少年は、そのまま小走りで、ベンチの少女の前に立ち、

学生カバンを開けて、何やら取り出そうとした……。

「イヤーッ、間に合わないかと、冷や冷やでしたョ。

エーッと、コレコレッ……!」

少年が取り出したのは、安物の合皮のケースに入れられた

学生証であった。

三葉は、それを手に取り、ジッと見詰めていた……。

美しく整った眉の間に、深い皺が浮かんでいる……。

「ネッ! アッ、それと肝心な、コレッ……!!」

少年は、再び鞄に手を入れ、何かを掴むと、学生証と引き換えに

三葉の手に握らせた……。

単色の紅い絹糸で編み込まれた組み紐が、そこに有った……。

「コレで、約束、守りましたからネッ! アッ、それからノートの日記帳、

チャンと机の上に置いて預かってマスョ。勿論、絶対に読んでマセンから。

アーッ、本当、助かったァー……。」

少年は、ココまで言うと、三葉の表情が一気に雲っている事に気付いた。

三葉の唇の両端は、微かに震えている……。

「 (……エエッ……?) 」

何と言葉を掛けたら良いのか……少年は戸惑うばかりだった。

次の瞬間、三葉は決心したように、少年の手首を左手でギュッと

掴むと同時に、紅い組み紐をその腕に叩き付けた。

反動で組み紐は、少年の腕をクルリと回る。

三葉は、一瞬のスキを捉え、それを結び付けていた……。

少年の腕に、美しい紅い蝶が羽を休めていた……。

「アッ……」 少年は、小さな声をあげた。

しかし、三葉は、もう何も言えない……。

唇の震えは、三葉の肩から腕に広がっていた……。

言葉を紡げば泣き崩れそうになるのを、必死で

こらえていたのだ……。

それでも、勇気を絞って、震える口を開いた……。

「……滝……君……。」

「……滝…君……、私の事……忘れな……」

三葉の声は、余りにか細く、駅前の雑踏の音の中で、

かき消されて行く……。

「……エッ?何ッ?……三葉さん……本当にどうしたンデ……」

少年、いや、滝がココまで尋ねた時、三葉の眼から溢れ落ちた涙が、

紅い蝶の羽根を透かして、滝の腕を叩いた。

その途端、滝はハッとなる……。

三葉が泣いた事に驚いた…のでは無い。

その時、滝は、三葉の心の景色がハッキリと見えたのだ……。

絶望と恐怖の嵐の只中で三葉は泣き叫んでいた……。

そして、三葉の音に成らない叫び声が、滝にはハッキリと聞こえた……。

「……滝……君……!!、滝…君……!!、……私の事……、忘れないで……!!!」

三葉の心が、強く弾かれ震えた時、滝の心も強く震える……。

何故、こんな事が……?

滝には訳が判らない……。

しかし、そんな迷いを一蹴する、信じ難い1つの確信が、

滝の心の底から一気に沸き上がり、言葉と成って、

滝の口から漏れ溢れた……。

「……三葉さん、……君は…誰だッ……?!!」

……これより映画タイトル……

     デヘッ、与太郎ッス。プロローグ、終わりでヤンス。

「君の名は。」と「天才バカボンのパパ」part3

「今度バカリは、ダメかも知れない……….。」

柄にも無く、与太郎が悲観して、犬が尾を下げるように、首をウナダレ、

沈んでユク……….。

……….暗くドンヨリした空気が漂い始めた……….。

と、その時、全てを吹き払う、澄んだ一声が、お白州に響いた!

「待っターッ!!」

吟味の関係人の出入り口から、スッと現れた町衆。

伏して両の手を付き、土下座のまま動かない。

姿形こそ、ひれ伏してはイテモ、

江戸前の気っ風と矜持が、羽織り袴をまとって、そこに居た。

シッポを下げかけていた与太郎が、スグに気づいた!

「アッ!親方!! 」

与太郎のシッポが、クルリとハネ上がる。

その言葉と同時に、男は微かに顔を上げ、与太郎にチラリと微笑みを返した。

そして、ヨドミの無い口上。

「アッシは、神田OO町に住まいヤス、大工棟梁の政五郎と申しヤス。

本日、ただ今より、このお白州に参戦致しヤス。

この通り、大岡様からの参戦許可証も、頂いて参りヤシタ。

そしてコチラは、全日本大工連盟の、棟梁許認可証でゴザイヤス。

宜しく御改め下さいヤシ。」

用意の書状を側役人に渡そうとする政五郎。

スルト奉行がそれをさえぎって、

(奉行)「オーッ!その方が政五郎か!待ちかねたゾ!参戦などと物騒な事は申

ナ。書類などはアトでイイから、早くコッチ来なさい!与太君の隣り、空い

てるョ!」

言われるママに、政五郎は与太郎の隣りに座る。横の与太郎をチラリと見て、

「もう大丈夫」と言うように、再びカスカに微笑む。

(与太郎)「親方、アリガトウ……。」

(奉行)「イヤーッ、政五郎ョ!ソチは知らんでアロウが、その与太郎目に奉行

は、ボッコボゴじゃー!つい苦し紛れに、吟味案件以外の、本来はスルーのハ

の事案を持ち出スという禁じ手を出してたトコジャョ!

ココで、オヌシまで、与太君に味方されると、奉行は完敗必至ジャ!

そこで、チト相談ジャガ、奉行の味方に廻ってクレマイカノー?」

(政五郎)「チョ、チョット待って下セーナ。お奉行様、このお白州は

「大工調べ」ジャネェーんデスカイ?

アッシはてっきり大岡様から遠山様に、吟味役が繰り上がったとバカリ

思ってオリヤシタが……….。」

(奉行)「チャウチャウ!「大工調べ」は、キレ者の大岡君が、この後

キッチリ、スッキリやるでしょうョ。

ココはネ、「君の名は」のヒーロー、滝クーンの吟味中ナンデスョ。

シカシのー。与太君は大したモンダヨ!奉行も、この映画ニャー、

恒例の潜入捜査してきたケド、与太君が一枚上だよ。

ヨーク調べてるネェー!

政五郎ョ、与太君とこの映画の関わりについて、奉行に教えては

クレマイカ?」

(政五郎)「ソーでしたカイ。与太が因業大家に、道具箱カタに取られて、

ブラブラ……

アッ、ソコは、ご存知なんでヤスネ。で、アッシが映画でも見といでッテ、

昼前に与太に木戸銭渡しタンでヤンしたが、この野郎が戻って来やガッタのが

日暮れ時で、今日はコレで仕事上がろうって時分でサァ。

それも、コイツにゃ珍しく仏頂面下げて来やガッタもんデスから、アッシが、

「オーッ!映画どうだったい?」ッテ水向けると、

「親方、とってもオカシかった。」て答えやがんデサァー。

「面白くって良かったジャネェーカ!」て言いやすとネ、今度は、

「ソーじゃネェーや!とっても筋ツマが合わなカッタ。」って

ヌカシやがったンデスヨ。」

(奉行)「 (ドコカで聞いたような展開ジャナ?) 」

(政五郎)「以下、掛け合いで参りヤス。」

(政)「与太郎ョゥ、気ィ悪くシチャ勘弁ナ。オメェの頭ジャ人様が

1で判る事ァ、メェは6も7もカケネェーと、イケネェーんだせ゛。

それでも判んなカッタラ、アッシのトコに聞きに来ナッ!テ、

いつも言ってるダローョ。」

(与太)「ソーじゃネェーや!アタイ、今日「君の名は」と「ゴジラ」両方、

見て来たケド、「ゴジラ」は、アタイのオツムじゃ難しくて良く判んネェー所

が、イッパイ有った。これは、後で親方に教えて貰おうッテ思ったョ。

だけどネ、「君の名」の方は、随分と筋ツマが合ってネェーや!!

あんまり筋が合ってネェーから、アタイ、途中で寝たのカナ?と思って、

もうイッペン見たケド、ちゃんと起きて見てタンだ、筋の方がオカシイん

だって判った時点で、アタイは安心して寝チャイましたョ。」

(政)「何デェー、3本立かよ!道理で日も暮れチマワァー。ケド、木戸銭、

そんなに渡しチャイネェーダロ?足りたのカイ?」

(与太)「親方ァー知らネェーダローケド、最近は「シネコン」てのが

流行っテテ……」

(政)「シネコンぐれぇ知ってらぁ。けどよー、アリャ入れ替えとかウルセーん

じゃネーノカイ?お前!まさかズルしたんジャネェーダローナ?!」

(与太)「アタイはオツムは悪いケド、悪さはシネェーや!

親方ァー知らネェーダローケド、今度「重宝シネマ」ッテのが出来て、

アタイは重してんデェー。」

(政)「何デェー、その「重宝シネマ」ッテーのは?」

(与太)「アノネ!「重宝シネマ」ッテのはネ、二回目から半額で、オマケに

見放題ナノ!だけどネ、見放題でも予約が優先だから、大当たりで満席

なんかダト、見られネェー。で、大当たりの作品でも安心して見たケリャ、

又、半額払えば、座席がチャンと指出来ラァー。デモネ、並みの映画なら、

空いてる席にチョコッと座って見てる分ニャ、3本目からは、タダ見ナノ!

映画館にしてミリャ賑やかに成るし、ドリンクは売れるしで、悪かネェー

見テェーだよ。上手く出来てやがんの!親方、知らネェーでショー。」

(政)「知らネェーョ!そうかい。それで3本立てカヨ!ナルほどネ。」

って、お奉行様、そこでアッシが話しを止めとキャ良かったンですが、

アッシも懲りネェー性分で、ツイこう聞いチマッタんでサァー。

「で、与太ヨゥ、どこがソンナニ、筋ツマが合ってナカッタんデェー?」

ッテネ。これが、間違いの始まりデサァー。

それからッテート、この野郎、シャベルはシャベルは、口から泡飛ばし

ヤガッテ、アッシに向かって来やがるカラ、コチトラ仕事の片付けも

出来ネェーんで、こう言ったんでサァー。

(政)「オーッ与太ョ、ワカッタから続きは明日にして、今日はココラで

帰ンナ。おっ母さんが心配してんソ゛。」

(与太)「アッ、ソウダ!アタイ帰ラァー。」

ってんで、翌朝、仕事場……今、番町のお屋敷やってんデスけどネ、

その屋敷の松が向こうに見えたカナ、と思いヤスと、誰かが手を振って

アッシを待ってヤガンデサァー。

近づくと、コレが与太なんで。イャーな予感がしたんでサァー。」

(与太)「親方!昨日の続きダッ!約束ダッ!」

ってんで、この野郎、半時近くも、ココがオカシイ、アソコもオカシイ、

親方ドーダ?ってアーダコーダ言いヤガッテ。

何しろ、アッシの見てネェー映画の事デスんで、サッパリ判らネェー。

仕事ニャなネェー。金魚の糞ミテェーに付きまとって離れネェー。

その内、職人達が陰でクスクスし始めヤガッテ、ショーがネェーから

(政)「オイ、与太ッ!そんなにオカシかったら、3ベンでも4ヘンでも

イイから、今から「重宝シネマ」行ってその映画見て、もう一度

確かめて来い!

寝チマッたら起きてマタ見りゃイージャネェーか!ドーセ見放題ダローョ?

ホレ、木戸銭ダッ。余ったらドリンクでも買いナ!」

(与太)「サスガァー親方ダ!アタイ、行ってくらぁ。」

ってんで,この野郎、木戸銭掴んでワァーッてんで走ってって、

今日はソのまま家帰るダローと油断してたら、又、日暮れに、

ハァハァしながら走って戻って来ヤガッたんでサァー。

(政)「オー、与太ッ!落ち着け!オイッ誰か水持って来てヤレ!デ、

今日は何ベン見た?」

(与太)「1ぺん見て、2へん目は寝て、3ぺん見て、4へん目は

半分寝てタ。アタイ、結構、クタビレタ。」

(政)「そりゃ、走って来たからダョ!オメェーも懲りネェーなぁ。

よく眼が疲れネェーな!」

(与太)「デモネ、オカシな所はヤッパシ、オカシイヤ!アタイの頭も

チートは悪いケド、オカシクは無かったッテ、おかげ様でヨク判り

マシタ。」

(政)「そりゃ、良かったジャネェーカイ。コチトラも仕事、

もう上がるから、オメェーも、今日はコレで帰ンナ!

おっ母さん、心配してンゾ。」

(与太)「アッ、そうダッ!アタイ帰らぁ。皆さん、お疲れ目様ジャネェ、

お疲れ様デシタ。ジャ、親方!又、明日!!。」

ってんで、与太の野郎、帰ったんデスけど、「又、明日!!」デサァ!

今度はドーヤッテしのごうか。アリャオカシイ、コリャオカシイで、

今日、半時 ( はんとき約1時間 ) ダッタから、明日は一時 ( いっとき 

約2時間 ) ジャとても済まネェー。 エーイッ!ドーとでも成りヤガレ!

ってんで、覚悟を決めタンでサァ。」

(奉行)「コレ、コレ!チョット待って下さいヨ?!話が変デスョ?!

政五郎ョ、オヌシは知らんダローが、奉行はこの映画に、「ソレは

ネェーダローョ!」との判決を出したんデスョ!ところが、与太君は、

アー言えばコー言うでことごとく反論しまくって、奉行の方が与太与太、

いやヨタヨタなのジャョ。つまり、与太君は、この映画の、予想外の

ボランティア弁護人ダョ!!

ところが、オヌシの話では、その与太君こそが、「ソレはネェーダローョ!」

の旗百本振り回してる、鬼検事って事だよネ!ドーナッテルノ?!」

(政五郎)「アッ!そりゃキット、こうナンデやすョ。翌朝、与太の野郎が、

ヤッパシ番町のお屋敷で、アッシを待ち伏せしてイヤガッタんで、
こう言ったんでサァー。」

(政)「与太ョ、オメェーの心持ちは良ーく判るョ。ナァーッ、筋が通ら

ネェー、筋ツマが合わネェーって所が、手足の指でも足りネェーってん

ダロー?それじゃー、こうしたらドーデーッ。オメェーの好きにシテミナ。」

(与太)「……好きにするって………何デェ?……。」

(政五郎)「オメェーも、映画が嫌いなコタァ、ネェーんダローが。

だったら オメェーが、コレだったら真っ当で、一本筋が通ってラァーと

納得出来筋書きを、考えちゃドーデェー。

ドーセ、お白州までには、まだ日数がアラァ。毎日、「重宝シネマ」

って訳にもイカネェーから、与太、テメェーが筋書きを好きに書いて

見たらドーデェー、って事ヤナ。」

(与太)「………… 」

(政五郎)「但し、コイツを忘れちゃ、イケネェーゼ。

世の中に「角に曲がった柱」なんざ、アリャしねぇーダロー。

ケドョ、二本の柱の片方にホゾ穴くり抜いて、片方にホゾこさえて、

ソイツを合わて、クサビを打ち込みゃ、立派な、ビクともしねぇ

「角に曲がった柱」に成るダローガョ。だから与太郎ョー、オメェーが

オカシィヤ!と思った事でも、よーく見りゃ、オカシクも何ともネェー、

上手くコサエられてる事も有ルンダ、って事を忘れちゃイケネェーって

事サナ!それでも判んネェー事が有ったら、オイラんトコ、いつでも来ナ!」

スルッテェーと、与太の野郎、急にシレっとして、こう言ったんでサァー。

(与太)「………. 親方 ……….。それは「君の名は」真っ当化プランと云う事デス

イ?」

(政五郎)「マットウでも、四等でも構わネェーが、早い話、与太版のアナザー

バージョンってコッタな。」

(与太)「……….名前はトモカク、これは時間との闘いにナリマスな……….!!

親方、アタイは今日はコレにて、お面をカブリます、じゃネェーや、何だっけ?

アッ!ご免コウムリますダッ!」

ってんで、野郎、サァーって走って帰ったんデサァー。

デ、その日は勿論、仕事場ニャ戻らネェー。

翌日も与太の野郎、顔出さネェーんでホッとしましたらネ、

翌々日も、出てコネェーんデスョ。スルッテェーと、職人達の中ニャ、

「親方、与太公、顔出しマセンネ。」とか、

「与太の野郎、大丈夫ですカイ?」とか、お節介、出しやがんデスヨ。

さすがに、ソン次の日ニャ、アッシも心配になって、与太の野郎ん家を覗きに

行くと、入り口の木戸に、キッタネェーひらがなで、「めんかいしゃぜつ!」

の貼り紙が目に飛び込んだ!

てっきり、おっ母さんでも大病かと思って、

「オーッ!政五郎デェー!入るゾーッ!」ってんで、急いで木戸開けると、

与太の野郎、部屋の中で、机の前にチョコンと座ってヤガンデスヨ。

「おっ母、どうしたっ!!」ッテ聞くと

「今、紙と鉛筆、買いに行った。」テカラ、手延ばして与太の頭、ヒッパ

タイテ、「テメェーが買い行きヤガレ!このバカヤローッ!!」ッテート、

「アタイも、そう言ったんだケド、おっ母が自分が買って来てやるカラって

言うから、本人のたっての希望を、かなえて差し上げマシタ。」テカラ、

もうイッペン、野郎の頭をヒッパタイテ、

「何してヤガンダ、コノヤローッ!」ッテ聞きヤスト、こう答えたんデ。

「アタイは、ただ今、……オカエリなさい、じゃネェーや、

ただ今「君の名は」っ当化プランの作戦の実戦配備中でゴザンス。」

アーッ、そうか!アッシが3日前に与太に「好きにシテミロ!」って言った

を、野郎チャントやってヤガッタンダ!って、気付キヤシタ。

よーく見るッテート、机の脇に、結構な厚めに紙が重ねてあるんでヤンスョ。 

作戦原稿だテンデスヨ。

「その真っ当化プランてのは、大部出来たのカイ?」

「そんなに早くは出来ネェーヤイ!ケド、肝心な所は出来テラァー。

プロローグと、エピローグ、始めと終わり、アルファーにしてオメガ……….」

って、又、生意気な事ホザキやがるんで、もう一度、頭ヒッパタイテ、

本人いやがるのをヒッタクルようにして、作戦原稿を取り上げて見ますトネ、

ヒデェーもんだ、コレが!! キッタネェーひらがなバッカリで、とても他人様

に出せる物じゃネェー。

ところが、お奉行様、一言一言たどりながら、苦労して読んでミヤスと、

コレが意外に結構なもんでヤンスョ。

デネ、アッシのカカァ、読み書きが一丁前なもんで、コイツに清書させる事に

決めヤシタ。

「オーッ、与太、コレ借りてくゼ。カカァに清書させて、出来次第、持って来

てヤラー。続きは又、取りに来ラァー。コレは紙代の足しダョ。おっ母さんに

ヨロシクなっ!」

ってんで、家に帰って、アッシのカカァに頼むと、最初はアーダコーダ言って、

渋ってたんスケト゛「アノ与太公が書いたんダカラ。」ってーと、

「そんじゃ、ショーがナイヤネ。」って引き受けたんデサァ。

ホッとして、アッシが煙草しばらくクユラしてマスと、カカァの野郎、戻って

来ましてネ、こう言ったんでサァー。  

「アンタ、コレ、本当にアノ与太が書いたのカイ?」

「そんなキッタネェーひらがな、誰が書くんデェー!」ッタラ

「ソリャそーだねー。フーン。アノ与太がネェー……….。」ッテンデ

仕上げたのが、今、アッシの懐の中にアリヤス。

(奉行)「ホーッ!そういう事か!ナルホド……..。与太君なりに、角に曲がった

柱の謎を解いた、という事ジャナ………!」

(政五郎)「で、お奉行様、このお白州ジャ「君の名は」の「ソレはネェー

ダローョ!」を吟味中との事ですが、ご無礼を百も承知で申し上げヤスが、

コウしちゃ頂けネェーでショーカ?」

(側役人)「コレ!政五郎!控えぃ!」

(奉行)「カマァーネェーョ。政君、何ーンでも言ってチョーダイナ。」

(政五郎)「有り難うゴザイヤス。お言葉に甘えヤス。アッシも「ソレはネェー

ダローョ!」に付いチャー、コノ与太から、耳鳴りスル程攻撃されましたン

デ、痛ェー程解りヤス。

只、コレを一々取り上げていたら、夜が明けチマウ所か、ウン気の時分ニャ、

物は腐っチマイマサァー。そこで、どうでガンショーネェー、「ソレはネェー

ダローョ!」を、あげつらうんジャなくて、「コレならソーダローョ!」って

のを、ハナっからシマイ迄、ズラリと並べて見チャ、どーですカイ?

たまたま、アッシがこの与太に、「好きにしてミロ!」ってタのを、この野郎

が何とかマトモに仕上げた物も、ココに有りヤスンデ、コイツをタタキ台に

して、一丁、お考え頂けマスと有り難ェーと、考えてオリヤス。」

(奉行)「政君ョ。オヌシは知らんダローが、この奉行も、「コレならソーダ

ローョ!」ってのを、既に一部分やって見たのジャヨ。

ところが、これも与太君にボッコボコにされチマッテネェー。

全部とナルトだよねー、ボッコボコのボッコボコのボッコボコ……。」

(政五郎)「イヤイヤ、違うんデサァー。お奉行様お一人でって事ジャー有り

ヤセン。与太の野郎でさえ、コノくれぇの事はヤレたんでサァー。

世の中、頭の切れる奴ァ、ゴマンとイマサァー。で、このお奉行所で、

まとめて頂けりゃー宜しいんジャネェーかと思いヤスンデ。」

(奉行)「政君の言う事も、もっともジャヨ。だけどネェ……。」

(側役人)「お奉行様、よろしいでショーか。」

(奉行)「エッ?何ッ?側役人のOOチャン!珍しい!何か言いたい事アルノ?

慮……してナイネ……。何でもドーゾ。」

(側役人)「お奉行様も、ココいらで、お好きに為されては、如何ですか?」

(奉行)「アリャマ!ヨクゾ申しタ、側役人殿。持つべき物は側役人。有り難い

ネェー。一本、筋の通った王道の台本を、実物丸ごと目の前にゴロリと転がし

て見せる、って事か。

ヨーッシャ!オイラも、好きにシチャウゼ!」

(デ、ハンコはドコに押すの?エッ?ハンコ要りません?本当?映画が違イマス?

ーッ、ソーダネ。OK,OK。)

(奉行)「で、政君、例の真っ当化プランは、どこまで完成してるの?」

(政五郎)「ハイ、それが、まだ2,3分て所でショーか。」

(奉行)「何ッ!そういう事か。それで衆知を集めヨーッて訳カイ。ソリャ、

かえって都合が良い。と言うのはネェー、ホラ、オイラもこの映画に潜入捜査

してるデショー。その時、個人的に引っかカッテル事が2つバカリ有って

ネェー。ソレ、ついでッチャー何だけど、何とかしてモラエネェーかなッテ訳

ョ。」

(政五郎)「アッシなんざ、この映画、見てネェーんでヤンスけど、判るヨーな

気ィシヤス。で、何スか?その2つテーのは?」

(奉行)「1つは、入れ替わりの記憶ジャ!この映画だと互いに入れ替ってる時

の記憶が曖昧デショー!目が醒めた時は覚えていても、夢みたいに段々

ボヤケル、ってケド、その割ニャー、キッチリ覚えてタリ、全て忘れてタリ、

イーカゲンだよね。

オイラ、細かい事が気になるタチでネ。1つ、スッキリ、サッパリ入れ替り時

の記憶は、互いに、お持ち帰り出来ない事にしてはモラエネーかな。」

(政五郎)「そりゃー、心配ご無用デサァー、お奉行様。この与太、その事ァー

ンザ言ってヤシテ、アッシの耳ニャ、タコの足8本どころかムカデの足

100本位に成ってマサァー。」

(奉行)「オーッ、そうか!ムカデか!刺されんヨーにナ!腫れると痛ェゾー。

デ、2つ目は、「結び」ジャ。一葉のバッチヤン、やたら結びマクっている

ダロゥ。オイラにゃーアレがチョイと気に障るんダョ。

何とかナランかのー。」

(政五郎)「お奉行様は、アッシと与太との掛け合いに立ち会ってイラシたん

デスカイ?コレ又、心配ご無用どころか、この与太の野郎、「結び」の事ジャ

半時もギャギャー言ってましたンデ。こんな具合でサァー。

[与太]「人も神も「結び」だって言ってんダケド、親方、オカシクねぇーか?」

[政五郎]「そりゃ、オメェー、「縁結びの神」ってーカラ、オカシクねぇー

ダローョ。」

[与太]「それジャ親方、その神様のお供えに、オニギリあげる時、ヤッパし

三角ムスビは、ダメですカイ?」

[政五郎]「何デェー、ソレは?」

[与太]「円ムスビの神様じゃネェーんスカ?三角はダメで丸い円ムスビ。」

[政五郎]「何がムスビだ、バカヤロー!!「縁」違いダョ!!」

[与太]「「円」違い?ジャお金の「円」ダッ!いくらのカナ?コンビニの

100円ムスビじゃダメですカイ?やっぱし、デパ地下の200円グレェーの高級

品……。」

[政五郎]「いい加減にシネェーと、ハッタオスぞ、コノ、バカヤローッ!!」

てな具合で、コチトラ仕事ニャ成らんは、職人達は陰でクスクスし始めるはで

シャーネェーから、コノ野郎を重宝シネマに放り込んだって訳でサァー。

ケドネ、結構、真っ当な事も言ってヤスンデ、今からコノ野郎に、直に言わせ

マスんで、チョッと、お待ちを。」

(政五郎)「オイ、与太!お奉行様に「結び」の一件、申し上げるンダ!

但し、7つも8つもジャ、ダメだゼ!短くまとめて、1つ2つに、しときナ。

わかったカイ?」

(与太郎)「アッ、アイ。それジャーお奉行様、短くまとめて、

2つにシトカァー。(短く出来るカナ?チョット無理カモネ……)」

(与太郎)「1つ目は、「解(ホド)き」の事。結んでバッカじゃ、ダメでぇー。

アタイは、ノコギリだってノミだってカンナだって、毎日、ちゃんと手入れ

シテルよ。チョットでも油断すると、サビちまワァー。

これ、親方から教わったんダケド、空気の中ニャ、失敗の素ってのが有って、

何をやっても失敗……って、アレッ?チョット違うナ?……アッ!

スッパイの素ダ!酸っぱいの素ってのが有って、コイツが鋼の鉄とヒッツキ

やがると、赤い粉ふいてビちまワァー。

一葉のバッチャンに言わせりゃ、これも「結び」ダョ。

ケド、「結び」っ放しダト大変ダョ。ノコは、サビちまう。

アタイら大工は、オマンマの食い上げで、干物になっチマワァー。

大工の干物なんざ、犬も喰わネェーや。

喰うカナ?ヤッテミョ。ハイ、オアズケ!オヤッ?….ヨダレだ。喰う気ダョ。

コレ、「親方の干物」ダョ。腹コワスとコワイよ。止めといた方が……って、

何の話でしダッケ?……アッ!ノコのサビの話ダッ!

デネ、アタイは毎日、チャンとノコの手入れをスルんです。

だけどネ、サビを、引っ剥がすンじゃネェーや。

「今日も、ご苦労さんデシタ。頑張ったネ。有り難うネ。」ってんで、

サビをほどいてヤルんデェー。「解(ほど)き」ダョ。

スルッテェーと、ノコもネ、触った物ァ何でも切っチマウような、

野暮なノコには、成らネェー。切る物ダケがスーッと切れる、優しいノコに

成らァ!不思議と、怪我しネェーんデェー。

デネ、一葉のバッチャンは、お奉行様の言う通り、やたら「結び」まくってた

ド、「結び」ってのは、良い事バッカじゃネェーや。

「解き」を忘れチャ、いけネェーや。

相撲で言えば、「結び」が「東の横綱」なら、「解き」は「西の横綱」ダョ。

ダケド一葉のバッチャンのセリフじゃ、「解き」は「十両」扱いダョ。

そりゃネェーやい!!「解き」は強ェーンデェー!!

一葉のバッチャンだって、かわいそうデェー。

シナリオ通りに、読んでるダケだもんネェー。

一葉のバッチャンに、責任は有りヤセン。アタイは悲しくナッチマウョ。

こうした台本上の問題の責任は、一義的には、脚本家、原作者、あるいは監督

は、その全ての者に帰すべきであり、違反した者には、1000万円以下の

罰金、あるは、10年以下の懲役、又はその両方が課せられ……」

(側役人)「コレ!与太郎!二度目!! シャンとせい!」

(与太郎)「アッ、アイ。じゃ次行くネ。

デネ、2番目が「時間」と「結び」の事。

一葉のバッチャンが、「時の流れ」を「結び」って言ってタケド、コリャ、

ちゃんちゃらオカシーヤイ!

「時の流れ」ってのは、アタイにはムズカシ過ぎるんダケド、

コレだけは、判らァー。

「結び」バッカじゃ、「時」は「流れ」ネェーやい!

「結ンデ」、「開いて」、ジャナイや

「結んで」、「解イテ」、「時」は「流れ」るんデェー!

「コレ迄」が有って、「今」が有って、「コレから」が有る。

「過去」と、「今」と、「未来」。

チョット、隙間が、有る。

横に並べると、….「過去」「過去」「過去」、「今」、「未来」「未来」「未

来」……

チョィト、クタビレますョ。

ココでね、「過去」と「今」、「今」と「未来」、は仲良しで、引っ張り合い

ョ。 チョット油断すると、すぐヒッツいチャウ。

「好きダョッ!」、「アタイもッ!」、「キャーッ!」、なんちゃってネッ。

ダケドね、「過去」と「過去」、「未来」と「未来」、同じどうし、(「今」

「今」も)は、仲悪くて、反発ダネ。

「アッチ行けっ!シッ!!」、「オメェーこそ、アッチ行けっ!シッ!!」、

喧嘩ダネ。犬と猿ダョ。ウン?……犬と猿ッテーと、桃太郎のお供ダネ!

よく喧嘩に成らナカッタね。実は、犬が、キビダンゴ100個と骨1ヶ月分で

裏切ッタとかネ。

デ、猿が桃太郎に、「大変デス。犬の野郎が、ヤッパリ裏切りヤシターッ!」

ッテーと、実は、桃太郎が1000両箱10個、(それも箱ダケ、中身ナシ!イャダ

ネェー!)で、最初に裏切ってターッ……….って、何の話でしダッケ?

アッ!「過去」と「今」と「未来」の話ダッ!

デネ、「今」が「未来」に、ヒッツクと、「未来」は「今」に、変わる。

又ネ、「過去」が「今」にヒッツクと、「今」は「過去」に、変わる。

「仲良し」と「反発」。コレって、磁石ミテェーだね。

同じ極だと「反発」して、違う極だと「ヒッツク」のと一緒だね。

磁石はスゴいョ!口で「アッチ行け!」なんてもんジャないョ。

絶対にヒッツカない。ムチ出して、互いにピシッピシッ!

SとS、MとM、ウン?チョット違うナ?

アッ!お隣さんダッ!SとMジャなくて、SとNダッ!

ェーと、何の話でしタッケ?

アッ、「過去」と「今」と「未来」の話ダッ!

全然、進んでネェーや。

デネ、「未来」が「今」とヒッツクと、「未来」の方は「今」に変わっチマウ

、すると、「今」「今」に成るから、喧嘩ダョ。結婚、即、離婚、ダネ。

ソンで、「今」は頭きて、元の、自分の場所に戻ると、「過去」が迫ってイテ、

「好きダョッ!」「アタイもッ!」「キャーッ!」で、「今」と「過去」が

ヒッツク、「今」が「過去」に変わっチマウ。デ「過去」「過去」に成るから、

即、喧嘩ダ。デ、「元今」の「過去」が自分の場所に戻ろうと、向こうを見る

と、大変ダ!

「元未来」の「今」の野郎が、その先の「未来」の野郎とヒッツイテ、そいつ

が、「今」に変わって、即、喧嘩デ、コッチに戻って来やがるンダ。

ってーと、「元今」の「過去」は、「元未来」の「今」と懲りずに、「好きダ

ョ!」「アタイも!」「キャーッ!」でスグにヒッツク。

すると、「元未来」の「今」は「過去」に変わる、と、即、喧嘩ダョ。

結構、クタビレるデショー。

こうして、「未来」が「今」と成って、「今」が「過去」と成って、

「時間」は、流れテク。

デネ、ヒッツクのが「結び」、離れるのが「解き」ダネ。

ここで、問題はネ、「隙間」のことダョ。

「今」が「未来」とヒッツク迄にカカル時間は、どん位カナ?

ンデもって、「今」「今」に成って、喧嘩して、帰って来て、「過去」と

ヒッツクのに、カカル時間は、どん位カナ?

てな事、考えると、難しいケド、面白くって、夜も寝られなくナッチまうハズ

なんスけど、五つも数えネェー内に、アタイはスヤスヤですョ。

良ーく、眠れるョ。デネ、アタイが寝チマウと、交代で起き出して、夜っぴき

徹夜で、難問に頭をひねってる、影のアタイが、居たりシテネ。ご苦労さまデ

ス…….って、何の話でしダッケ?

アッ!「今」と「未来」がヒッ付いて、離れるのにカカル時間の話ダッ!

アタイ、親方に、割り算と分数を習った時、コリャ面白ェー、と思った話が

アル。多分、アレだ!と思うョ。

1を3で割るデショ?テェーと、答えは2つアルね。変デショ。

3分の1、と、0.333333333333……..アーッ、クタビレタ。(算術はヤダネ!

アタイは、瞬間でクタビレます!マラソンで言ゃー、ゴールインしてクタクタ

なら、ごもっともデスョ。アタイの場合は、ヨーイドン、ハイ、スタートの

直後に、クタビレます。イヤだネェー。でもネ、中ニャー、スッゴく面白ェの

もアル! 次のが、ソレ!)

デネ、親方が、「与太、2つの答えを3倍してミナ!こう成るダロ。

3分の1掛ける3、で、1。もう一つは、0.333333333……掛ける3で、

0.999999999……。

で、0.000000000…….1、足り無くナッチマウ。この差の分はドコに行っチ

マッタのカイ? 与太ョ、サァどうする?」

デ、アタイが、「親方、それジャ番所に、行方知れずの届け、出して来ヤス

か?」ッテーとオコゴトを食べました、ジャネェーや、頂きました。

あんまり、ウマくなかったネェー。塩が足りてネェーのカナ?……ッテ、

何の話でしタッケ? 

アッ、そうだ、ゼロに近い0.00000000……….1がドコ行った?の話ダ!

「親方、手品みテェーなズルしちゃ、イケマセンゼ!きっとズルでしょ?」

って、アタイが 確かめたら、親方、種明かし、してくれたヨ。

コウでした。

1を3で割ると、「0.33333333333……….」は、間違いなんだって!

「0.33333333333……….と、オツリじゃネェーや、余りが0.00000000………1」

が、本当デス。余りを忘れチャ、イケマセン。迷子になっチャウヨ。

だから、コレを3倍すると、「0.999999999……….」は、間違いデシタ。

「0.333333333……….と、余り0.00000000………..1」の3倍、つまり

「0.999999999……….と、余り0.00000000………..3」が正解デス。

ここデネ、余り0.0000000……….3、は3で割り切れるヨネ。

するっテェーと、「余り」は「答え」に、出世できるンダッテ。

「余り0.0000000……….3」は「答え0.0000000……….1」に出世して、

「0.999999999………+答え0.00000000……….1」=「1.000000000……….」

=「1」に、ヤッパシ成るンデェー。

「何ーンダ。ヤッパシ、隠れんぼシテ、ズルしてヤガンの!」って、アタイが

言ったら、親方がネ、「ソーじゃネェーょ。与太ョ。物事ァ、ヨーク注意して

見とかネェーと、アッサリ本当の姿を、見失なっチマウって事ダヨ。

0.00000……….1 は、隠したんジャネェーぞ。見てる方が、忘れてんだ。

親がチャンと見てりゃ、迷子にゃならネェーんダヨ。」

「ソウデスカイ。親方、アタイが油断したバッカリに、アタイの子供と嫁さん

は、迷子にナッチマッテるんデスカイ。でもね、アタイは油断した覚えは

ネェー。第一、嫁さんもらった覚えもネェー。

けど、ヤッパシ番所に、今度は失せ者の届け、出しに行って来やショーか?」

て、アタイが言ったら、親方に頭ヒッパタかれマシタ。

痛かったネェー。ッテ、何の話デシタっけ?

アッ、0.00000……….1を、忘れチャいけネェーって話ダ!

デネ、話がアチコチ飛びまくりヤシタが、「過去」と「今」と「未来」の間の

時間の差はネ、この0.00000……….1、ジャネェーかと、アタイは思いヤシタ。

「結び」に、0.00000……….1、「解き」に、0.00000……….1、限り無くゼロに

近い「瞬間」で、時間は「過去」から「未来」に、流れて行くんダロナァー

と……….。

(但し、コレは、何のカニ、じゃネェー、エビデンスを伴っチャー、オリや

セン。アタイの、文字通りの、与太話デスョ。

だけどネ、この前、親方にこの話をした時、

「お前、本当に与太か?」ッテから、「アタイは、チョット足りない事にかけ

チャプロでェー。」って、エバったら、親方に頭ヒッパタかれマシタョ。)

ここデネ、0.00000………..1に付いチャ、もう一つ、面白い話がアルョ。。

これ、親方に聞いた時、アタイ、びっくりシチャッタ。

ノロノロ亀と駆けっこして、絶対に追い付く事が出来ネェー、アキレタ兄ちゃ

ん、(ゥン?チョット、違うカナ?まっ、イイや。)の話デス。

デネ、アキレタ兄ちゃんは、楽勝で100mを10秒、亀さん、必死で1mが10秒。

ハン100m付けて、よーいドン!

アタイは、アキレタ兄ちゃんの楽勝、と思ったら、親方がロクデナシ言いヤガ

のンノ。

「与太ョ、アキレス(アッ!アキレタじゃネェーや、アキレスの兄ちゃん

デシタ。)が亀のスタート地点に着いた時、亀は1m先に進んデル。

で、アキレスが1m先に着くと、亀は、0.01m先に進んデル。

で、アキレスが0.01m先に着くと、亀は0.0001m先に進んデル。

で、アキレスが0.0001m先に着くと、亀は0.000001m先に進んデル。

コレが、ずーっと続く。

だから、アキレスは、亀に、永遠に絶対に追い付けネェー。

サア、どーする、与太?。」

コレって、0.00000……….1の話ダヨネ。

「親方、又、手品ミテェーなズルしてんでショー。ズルしちゃイケマセンぜ。」

て、アタイが言ったら、種明かしをしてクレマシタョ。

「永遠に、追い付けネェーのは、時間を細切れにしている回数、の事で、

時間の流れの量としての、永遠じゃネェーんだょ。

(細切れ作業を)いつまでヤッテも追い付けネェーんで、いつまでタッテも

追い付けネェー事にはならネェーんだょ。

時間の量じゃ0.00000……….1秒の話になるんダヨ。

これジャ、時間が止まっチマウ。だけど、時間は止めようがネェーんダ。

オイラ達が、ドッカで、時間の測り方、捕まえ方を間違えテルに違いネェーん

ヨ。」

「ヤッパシ、親方、ズルしてヤガンノ。だけどネ、アタイが亀さんと駆けっこ

したら、アキレタじゃネェーや、アキレスの兄ちゃんミテェーに、ドジは踏ま

ネェーやぃ。」って言ったら、親方が口トンガラかして

「じゃ、与太、どーするンデェー。」ってカラ、今度は、アタイの方が、

種明かしをシタョ。

駆けっこは、二度シマス。

一度目。アキレスの兄ちゃんと同じで、ハンデ100mで、よーいドン!

デネ、アタイが亀さんのスタート地点に着いた時の、亀さんの位置を測る。

アタイは、アキレスの兄ちゃんヨリ、ずーっと遅いカラ、亀さんは1mより、

ずーっと向こうに着いてるヨネ。その位置を測る。

そんでネ、亀さんニャー悪いんダケド、亀さんのスタート地点から、逆方向に

同じダケの距離を戻ッテもらう。ココが、新しいスタート地点ダヨ。ハンデは

その分だけ短いヨネ。

ココで、二度目の、よーいドン。

アタイが、亀さんの元のスタート地点に着く迄、アタイは亀さんを追い抜け

ないョ。

ダケド、元のスタート地点に着いた時、亀さんは、アタイより極めてチョット

でも先に出る事はナイヨネ。0.00000……….1秒の分もネ。

100%完全な同着、に成る。

そんでネ、ココは、ゴールじゃネェから、駆けっこは続いてル。

だから、同着した次の瞬間、アタイは0.00000……….1秒の分だけ、亀さんを

追い抜いテル。

ホラね、親方、アタイは亀さんを追い抜きマシタ。

デネ、同着する直前の瞬間の、0.00000……….1秒が「結び」。

同着した直後の、0.00000……….1秒が「解き」にカカル時間じゃネェーかな?

と、アタイは思いヤシタ。

だからネ、一葉のバッチャンの「時間も結び」じゃダメなんデェー!

時間も、「結び」と「解き」の、両横綱で出来てるんジャネェーかな?ッテ

のが、アタイの、ラストの与太話デシタ。

エーッ、ココ迄の与太話で、お判りにナラナイ点、ご不明な点は、ゴザイマス

か……?」

(側役人)「コレっ!与太!三度目ジャ!イイカゲンにセイ!」

(奉行)「ヨイヨイ、不明の点は、宇宙ミテェーに果てしネェーけど、

与太話は、お判りにナリマシタよ。けど政五郎ョー、お前さんも、与太のカウ

ンターを食らってんだネェー。

オイラは、四五発、食らって与太与太、いやヨタヨタだけど、あのパンチは、

どこから出てくるンダイ?」

(政五郎)「そりゃあ、アッシもビックリでサァー。与太の野郎、普段は

文字通りの与太ナンスけど、映画の事となると、話が違うんでサァー。普段、

使ってネェ分だけ、映画の事だと、一気に頭が廻り出すミテェーで。

亀がアキレスにナッチマウんでサァー。」

(奉行)「ホーッ、与太君の変身ベルトは、映画って訳だ!世の中、面白ェ

なぁー。

さて、滝君ヨ。大変、お待たせシチャッて、勘弁ナッ!聞いての通りダ!

『ソリャネェーダローヨ!』の判決は、即『撤収、無罪放免』ジャナッ!

早いデショ。何でもアリっ!

それでサァー、この後、直ぐに御神体の祠に戻るカイ?

それとも、この奉行所で、チョイと遊んで行くカイ?」

(滝)「お奉行様、僕はこの後の、真の切れ者で評判の大岡様の『大工調べ』を

見テキたいデス。この与太朗さんと、政五朗親方が主役でショ?

だったら尚更です。」

(奉行)「オーッ、構わネェーよ。ジャア、そんなゴザに座ってネェーで、

コッチに上がって来ナッ!大丈夫だから。オイラが、大岡君には良く言っとく

カラ。ソコの特等席で、よーく、『大工調べ』を見てってクレタマエ。

オイラと違って、あの野郎、ジャねぇ、大岡君は本当に、頭が切れるゼ!

瓦10枚、一刀両断、電光石火の切れ味ダゼ!(ちなみに、オイラは叩き割る

タイプだな、ウン!) ケドね、心配ご無用。オイラほどジャねぇーが、

偉ぶらネェー人ダゼ、安心シナ!

さて、コレで、滝君の一件は、一件落着、祝着至極と行きテェー所だが、

一つ荷物が残ってラァーッ!

オーッ!政五郎の親方、政君ヨーッ!お主の懐に入ってる、例の与太君の原稿

『君の名は、真っ当化プラン』ダッケか?コピーすっからオイラにチョイと

預からせてクンナ。ナーニ、『大工調べ』の前までニャ返すカラよー。」

(政五郎、言われた通り懐の原稿を側役人に渡し、側役人から原稿が奉行に

渡る。奉行、パラパラと原稿をメクル。)

(奉行)「政君ヨ、お前さん、奥方にはカラッキシだな?」

(与太朗)「お奉行様、今度はヨク切れてラァーッ!ドーして解るの?アノネ、

親方とオカミサンはネェー、スゲェーんダヨ、アノネ、アタイが……」

(政五郎)「与太ッ!余計なオセッカイ出すんじゃネェー!」

(奉行)「マァマァ、政君、クールダウン、クールダウン。

しかし、お主の奥方は、一体何者なんダイ? この奉行所にも、筆の達者は

揃ってるケド、お主の奥方の右に出る者は、まず、大岡君ぐれぇダヨ。

(何しろ、あの野郎、まっイイカッ、文武両道、それもテッペンだぜ。)

政君も色々、ご苦労の御様子、お察し申し上げる。

ソレはソーと、『君の名は、真っ当化プラン』の正式な作戦名は有るのカイ?

エッ?何ッ?まだアリマセン?そりゃイケネェーやぃ!

何事も、作戦名は重要だぜ!

オーッ、与太君、何か希望はネェーかい?」

(与太朗)「ジャアね、『天プラが有って、鰻が有って、刺身が有る作戦』」

(政五郎)「そりゃ、オメェーが食べたい物じゃネェーか!お奉行様、

コンナのは、如何でショーか?『フリードリッヒ ベートホッヘン先生が作曲

された、交響曲第6番へ長調作品68『田園』の内、第5楽章作戦』、

コレは、スッタモンダの嵐の去った後の希望と感謝の……」

(側役人)「長いッ!」

(奉行)「マァマァ、それでは、拙者が決めて遣わそう。

コレは、政五郎の知恵にて、与太朗が心血を注ぎし物、よって、今後

『ヨタマ作戦』と致す。一同、異存は御座らんナッ!

コレにて、一件落着ッ。 フーッ、やっと終わった!お疲れ様デシタ。」

 

  次回、『ヨタマ作戦』の予定…………デス?

 
    
   

   

「君の名は。」と「天才バカボンのパパ」part2 改

「君の名は。」と「天才バカボンのパパ」part2 改

 

はじめまして、アタイ、大工の与太郎ってイイヤス。

やっとアタイ、ブログに出たーット思ったら、文字飛びまくりの穴ダラケ、全部ブログの旦那の責任ナンすが、「頼む!与太!代わりに謝っトイテくれ。後生ダーっ!」ッテ言われて、アタイが誤りジャネー、謝りに来ヤシタ。旦那、冷や汗ブン流して、ヤットコサ直したッテ事ですカラ、ドーか勘弁して下さいヤシ。(だけどネ、「旦那っ!大変ダッ!アタイの出てるpart2のブログ、イノシシに荒らされた畑ミテェーに成ってヤスゼ!」ってアタイが言った時の、旦那の顔ったらナイヤネ。あんまり気の毒ナンで、アタイが謝る事に成りヤシタ。詳しい事は、別の「お話」とイタシヤス。

 

摩訶不思議な緊張感に、支配されようとするお白州。

ソコに、突如響く、何ともシマリの無い一声。

「おっ…..おぶぎょうさま……….。おぶぎょうさまー…………!!」

(奉行) 「ンッ?誰ジャ、拙者を呼ぶのは?ソレも、ひらがなデっ!!

エーッ?エート、どなたデスカ?」

(謎の男)「アッ、アイ。」

(側役人)「(オッ!奉行の瞳から怒りの色が消えた!何という慈しみの「アイ」ジャー!!助かったー!!) エー、お奉行様に申し上げます。かの者は、この次に大岡様のお裁きとなる、「大工調べ」の訴え人、OO町に住まいます、大工の「与太朗」めにゴザイマス。」

(奉行)「何?大岡君の「大工調べ」の訴え人?アッ!知ってる知ってる。与太君ネ!デ、付き添い人の棟梁の政五郎は、来てるの?エッ?出番は次だからマダ?ソーダネ。とにかく、与太君はソンナに遠くに居ないで、コッチに来なさい!滝クーンの隣、空いてるデショ。デ、与太君は、何か言いたい事、アルノ?何でもドーゾ。」

(与太郎)「アー、アイッ。アタイも、この映画 ( 君の名は ) 見て来た。アタイがタメちまった家賃のカタで、大家さんに、大工の道具箱、取られて、仕事出来なくて、ブラブラしてたら、親方が木戸銭くれて、お前もキライじゃ無いんダローから、映画でも見といでって言われて、この映画見て来て、とってもオカシかった。  ( 横の滝君を見つめて ) この兄チャン、映画に出テタ。」

(奉行) 「コレコレ、与太君の言いたい事は、何ジャ?センテンスが 長い。細かく切って、手短に申してミヨ!」

(与太朗)「アーッ、アイ。お奉行様の言い分は、2つの点でオカシイや!」

(奉行) 「2つ、面白いか?」

(与太朗)「ソーじゃネェーや!筋ツマが合ってネェー。コレでお裁きなら、チャンチャラ可笑しいや!相撲だったらモノ言い、消費者だったら、クレーム、大統領だったら、弾劾…….。」

(奉行) 「コレコレ、判った、判った。デ、2つの点とは、何ジャ?」

(与太朗)「1つ目は、滝の兄チャンの事。

お奉行様は、滝兄(タキニイ)が、三葉チャンの事、覚えてないって、ヒツッコク文句言ってるケド、トンデモネェーおかど違い ダ!滝兄は、アニメのキャラなんだから、実写の映画みテェーな自由なんて、ネェーんだョ。

滝兄が、「コレ、変?」って思っても、監督に一言も、文句言えネェーや。こうした、台本上の矛盾の責任は、一義的には、原作者、脚本家、あるいは監督、又はその全ての者に帰すべきであり、違反した場合は、1000万円以下の罰金、あるいは10年以下の懲役、又は、その両方が課せられ……」

(側役人)「コレ!与太朗!ここは映画館ではナイッ!シャンとせい!」

(与太朗)「アッ、アイ。ソンでも、お奉行様のやり口は、滝兄イジメに違いネェーから、これ以上、滝兄をイジメると、教育委員会に訴えて、出る所に出るゾッ!って、もう、出てマシタカ。」

(側役人)「コレ!与太!、イー加減にセンカ!!」

(奉行) 「マァ良い良い。ノー、与太。オヌシの申す事、一理、有る。奉行の負けジャ。

しかしノー、3年前に、滝クーンに逢いに来て、自らの髪を留め結んでいた赤い組み紐を投げ渡し、名前もハッキリ名乗った、本件三葉の事を、滝クーンが、顔も名前も全て、スッキリサッパリ忘れてイルという、この1点、オカシイ事は間違いナカローが!!「天才バカボンのパパ」ではナイカ!ドウジャナ?」

(与太朗)「ソコ、ソコ、お奉行様がオカシイ2つ目は、ソコ!。 お奉行様は、「 (心に深く刻み付いているので、) 忘れようとしても、決して思い出せない。」のは「天才バカボンのパパ」に限るッて、「サンマは目黒に限る」ミテェーな事、言ってるケド、サンマはアッチコチで売ってラァ!。「天才バカボンのパパ」に 限っちゃイケネェーや!。

心に刻みが入る時、涙や血が、あふれ出る事だってアラァ。

そんな時ニャ、外から心にフタをかぶせチマウしかネェ……。

そうスリャ、想い出さずにスム……….。

忘れたんジャネェーや…….。

想い出せなくナルンだよ……….

外面は、「バカボンのパパ」と同じダョ…….。

忘れようとしても、決して想い出せない……….。

だけど、まだ、コッチ側に居るから、マシなんだョ…….。

もっとヒデェー目に逢えば、内側から心にフタをするしか

ネェーや……。

ハタから見りゃ、気フレだローョ……….。

もう、帰っちゃ来ネェーサ……….

アタイなんざ、ガキの頃から、何もしてネェーのに、石コロみテェーに、人に踏まれたり、蹴られたりして、大きくなったから、(ドッカで、聞いたヨーナ?歌かな? )チョットやソットじゃ、アタボー、ヘッチャラだい。

それでも母ちゃんと親方は、アタイの事を、一丁前に、扱ってくれたヨ。

ダケドネ、お奉行様、世の中にゃー、何ベンも何ベンも廻りをグルッと見渡しても、広い世間で、タダの一人の味方スラ見つからネェー、それでいて、天や神を呪ってもシャーネェーような、アタイなんざ目じゃネェー位、ヒデェー目にアッテる人は大勢いると、アタイは思うヨ。

そんな、身も心も裂けチマウ、つらい思いをした人、の中に

「忘れようとしても、決して思い出せない」人が居ても、オカシクはネェーと、アタイは思うのですヨ。

「忘れようとしても、決して思い出せないノダ。コレで良いノダっ!」で、良いノデスョ。世の中、広いんデェー!

「バカボンのパパ」ってキャラは、アタイと致しましては、大変、親近感が湧いて来ルのでは、ゴザイマスが、ソレはソレ、コレはコレですョ。ウン。

だから、アタイが、この映画の作者なら、滝兄と三葉チャンとの間に、そうした「 事件 」をコサエンだけど、ソーは、なってネェーや。

この映画だと、滝兄が三葉チャンの事、忘れチマウのは、タソガレ時、逢魔が時のセイだとナッテラー。

夕暮れ時、滝兄( 身体は三葉チャン )が、御神体の祠のある、外輪山の周りを、めぐり歩いているヨ。

三葉チャン( 身体は滝兄 )も、同じ所を歩いてル。

だけど、3年間の時間のズレがある…….。

タソガレ時が迫って来る。

すると、相手の気配を感じていたダケだったのが、

相手の声が聞こえるようにナル。

そして、トウトウ、相手の姿が見え、触れる事が出来る迄にナッチマウ!!

だけど、タソガレ時ってのは、逢魔が時って云う、オッカネェー別の名前があるミテェーに、ただジャー帰れネェー。

目ん玉、飛び出る勘定書が、廻ってくらぁ。

この映画だと、滝兄と三葉チャンの互いの記憶、想い出が、全て消されチマウ…….。

サァーッ、コッからダヨ、お奉行様!

アタイは、コンナ風に思ったんダヨ

タソガレ時になると、夕焼けの空ニャー、目に見えネェ位、ほとんど透き通った大きな寺の鐘(教会の鐘でもイイカ……)が現れるんダヨ。

そして、その鐘が鳴り響くと…….ただしソイツは、姿形が透明であるミテェーに音もしネェーんだ…….。(……電波の鐘カナ……?)

とにかく、その鐘が鳴り終わる時、滝兄と三葉チャンから、互いの想い出の全てが、一片も残らず、泡ミテェーに消えて行く……….。

ココでダヨ、お奉行様!肝心なのは!

「想い出消しの鐘」の音が、滝兄と三葉チャンに響く時、

忘れちゃナラネェーのが、「もう一人の滝兄」の事ダヨ!

100里(ジャネェーや、キロか?)以上も離れた、江戸ジャネェ、東京はOO町で、試験勉強かナンカで、机にカジリついてる、中坊の滝兄を、忘れチャ駄目デェーッ!

「想い出消しの鐘」は、中坊の滝兄の心にも、確実に響いているに違いネェーや。

だって、鐘の音が響くのは、「場所」ジャなくて「人」だからデェー!

するテェーと、こうナルよ。お奉行様が、さっきヤッテタ再現フィルムみテェーに、アタイもヤッテ見るヨ。出来るカナ?

場面 伊 (イロハ、のイ)

滝兄が、勉強机にカジリ付いてる。問題集と首ッピキだよ。

難問ダネ。頭かかえテラァ。何ナニ? 「ノコギリの刃を研ぐことを、目立て(めたて)と言いますが、次の説明の内、正しいものは、ドレですか?」 オッ、アタイ判りマスヨ。

居間の方からは,TVの声がしてる。

「OO彗星は、いよいよ今晩O時に、地球に最接近し……….」

滝兄の父ちゃんが、夕餉の支度してるョ。コンロで何か作りら、滝兄に声を掛ける。

「滝っ!余り根詰めんナヨ!少しは休め。」

滝兄は、生返事。走らせる筆を止めネェーや。

「アーッ…….。」 やっと伸びをシタョ。

フト脇に目を落とす。

その左手首には、前の日に、三葉チャンから渡された、紅い組が、グルグルと結ばれてイルョ……。

筆が止まった………。

「アノ娘は誰ナンダロウ?名前……ミツハ、だったヨナ…….。どんな字なのカナ?

一息つくか…….。」

滝兄は立ち上がると、居間の向こうに夕焼け空が覗いているベランダに向かうョ。

父ちゃんの声が後ろから追っかけて来る。「OO彗星、もう見えるカナ?」

ベランダに出てる滝兄が、空を見上げる。

彗星はまだ見えなかったケド、美しい夕焼けが広がっていた。

きっと綺麗な星空…….。彗星、ドンナかな……?」

滝兄は、文字通り深く一息ついて、部屋に戻ろうとする。

と、何か、クラッとする。

「(めまい?イヤ違う…….?)」無意識に、片手をコメカミに当てるョ。

その手首には、昨日三葉チャンから渡された、紅い組み紐。

滝兄の父ちゃんが、炊事の手の水を切りながら、近づいてくるョ。

「オウ、滝、勉強疲れデスカイ?そうそう、お前が昨日言ってた、紅いリボンジャネェー「紅い組み紐の少女」、思い出せたカイ? オヤ?何だい、もう腕に巻いてるジャン。」

滝兄には、もう全く、訳が判らない。

自分の左手首の紅い紐は、一体、何ダ!?

ダッテ、たった今し方、「想い出消しの鐘」が鳴っチマッタんだから、ドーショーもネェーや。

滝兄の中で、三葉チャンとの一部始終は、もう封じ込められチマッタ。

(以下、掛け合いにするョ。)

(滝兄)  「コレ、父さんが、くれたの?」

(父)  「何言ってヤガンダ、気色ワリィー。ドコの父親が息子に、ソンなのプレゼントでゴザイするカヨ。で、下級生か?アッ、制服、違ってタンダッケな。ドコの女子中?ソウソウ、お前、その娘の名前、言ってたぞ。何だっけな、ホラッ……!」

(滝兄) 「……….ワカンナイ……….!」

(父)  「オヤオヤ、我が息子殿は、罪つくりダネェー。その娘は、カワイソーだネェー。たったの1日で、名前も忘れられチマウんだから!この薄情者メガッ!」

……コンロの鍋が、グツグツ始める……

(父)  「オッ!、鍋、鍋、フクフク!。」

父ちゃんは、炊事の仕上げに戻るョ。

滝兄は自分の部屋に戻る。そして、机の上に乗せた左手首を、ジッと見つめた。

紅い組み紐が結ばれてイルョ。

滝兄は、何も想い出せない……….。

…………昨日の、学校帰りの電車内……….。

滝兄が、一方向を、見つめている。

足音が近づいて来る。と、……電車内の人や景色が、霞んでゆく……。

真っ白い空間に、ポツリと、独り残された、滝兄。

足音が止む。

姿は無い。

有るのは、……人の「気配」だけ…….。

音の無い世界で、滝兄は、名前を呼ばれた…….。

いや、滝兄の心に、直接に響いて来る、無音の声……….。

 

「…………..(滝)………..(君)………..。(滝)………………。」

 

「 誰っ ?!! 」

気配が、遠ざかってゆく…….。

 

「……….(私)……..(の)……….(名前)………..(は)……..(……)………..。」

 

「君は?!!!」

 

と、突然、真っ白い空間に、宙を舞って現れる、紅い組み紐。

時間の流れが、スローモーションの様に、遅くなってゆく。

ゆっくりと、滝兄の眼前まで迫って来る、紅い組み紐……….

 

ハッとして、滝兄は我に帰るョ。

 

いつも通りの、勉強机。

左手首には、覚えの無い、紅い組み紐。

瞬間、よみがえる、空白の景色。

 

かすかに残る、人の「 気配 」……….。

 

しかし……….。

 

想い出せない…………!!   何も……….!!!

 

滝兄が、つぶやく。

「……….君は……….、」

「……….誰だ………?!!!」

 

一巻の終わりデスョ。再現って、結構、大変ダネ。

アーッア、アタイもクタビレましたョ。

デネ、こうした訳だから、「想い出消しの鐘」のせいで、中坊の 滝兄は、三葉チャンの顔も名前も、何もかも、忘れチマウんだョ。たったの1日で。だから、3年たって、高2の滝兄が、三葉チャンと入れ替わって、その顔を鏡で見ヨーガ、「ミツハ」の名前を呼ばれヨーガ滝兄に判るワケがネェーや!。

イヤさ、奉行ォーッ! 思い知ったカァー!!。

(側役人)「イヨッ!O代目ッ!じゃナクッテ、コレ!与太郎!調子に乗るナ!シャンとせい!。」

(奉行)「ヨイヨイ。イヤァー与太君、よう気付いたノォー。このままだと又、奉行の負けジャ。

しかしノォー、与太君ョ。滝くーんは、忘れたハズの本件三葉を、クリアーに想い出しているシーンが有るではナイカ!ホレッ、奇跡の最後の入れ替わりの後、妹の四葉の「姉ちゃん、 昨日は突然、東京に行っチャウし…..」とかをキッカケに、思い出しチャッタでショー。本件三葉が、東京にいる中坊の滝くーんに、会いに来た事を。アニメみたいに鮮明に!

オカシイでしょー?

「想い出消しの鐘」の封印は解かれチマッタ、とでも言うのカイ?」

(与太郎) 「アッ、アイ。解かれチマッタ、とでも言うのデスョ。

封印を解く「 鍵 」は、2つ。

だけど、封印されテル中身は、魔物でも、オッカネェー化物でもネェーや。滝兄と三葉チャンの「 想い出 」ダヨネ。万一、中身がモレても、傷つく人はイネェーョ。だから、「鍵」が、そんなに厳重デモ難しいのデモ、アルワケがネェーや。

それでは、「 鍵 」の答えデスョ。早いデショ。お奉行様と同じ。

「 1 の 鍵 」は、「 時 」。

鐘の鳴った、タソガレ時、又は、その近所。( ん?チとオカシイ?)

「 2 の 鍵 」は、「 場所 」。

鐘の鳴った、カルデラ、又は、その近所。( コリャ、合ってラァー。)

ドンピシャなら、「 時 」100点、「 場所 」100点で、1等賞。封印が解けて、扉が開いて、くす玉が割れラァー( 割れマセンカ )。

だけど、近づくダケで、封印は、弛むんダヨ。

滝兄が、三葉チャンの事、想い出しチャッタこの場合、

「 時 」は、夕暮れ近くで80点。「 場所 」は、カルデラの麓の近くで80点。

コレダケで、封印は弛むんダケド、解けるには、最初に「キッカケ」が必要デスョ。火打ち石の、「カチッ!!」で、火が付くようなモンデェ。(コレって、第3の鍵なのカナ?実は、一番重要だったりして。デヘヘ。 )

ソンデネ、この場合の「キッカケ」は、お奉行様の言う通り、妹の四葉チャンの言葉、「姉ちゃん昨日、東京に行った。」ダヨ。「カチッ!!」ダネ。

コレを聞いて、滝兄の封印は弛み始めるョ。

三葉チャンが、3年前に、自分に逢いに来た事を、想い出し始めルンダ。

滝兄は、チャリでカルデラに向かうよ。陽は傾き、タソガレ時が迫って来る。ドンドン100点に迫ってクル。封印は、ミルミル弛 ンで、トウトウ解けチマウ。

もしも、「鐘の封印の守り神」ミテェーのが居て、99点デモ駄 目、両方100点デナキャ駄目ダ!なんてヌカシやがったら、アタイもダケド、親方が、黙っちゃイネーゼ!!

親方、オッカネェーぞ!!

アタイは、家賃を1両と800 ( ェーと、今のお金ジャ10万と2000円ぐらいカナ?)ためチマッテ、大家さんに、大工の道具箱、カタに取られて、仕事出来なくて、ブラブラしてたら、親方が来て、「コレで払ってこい!」ッテ、財布を渡されたケド中身が1両シカなくて、大家さんチで、1両( 10万円 )払って、道具箱、返せって言ったら、大家さんが、800 ( 2000円 ) 足りネェー」ッテ言って、道具箱、離さないから、アタイが、「 800 は、アタボーだ!」ッテ言ったら、大家さんが怒って、 親方が、謝りに行って、「 800 は、すぐ、持って来ヤスから、与太郎の道具箱、後生だから先に返しチャくれヤセンカ。」ッテ、頭下げて頼んだら、大家さんが、「イヤなコッタ」ッテ断ったから、今度は、親方が切れて、「ヤイ大家!テメェーなんざに、金輪際、頼み事はシネェーヤ!道具箱は、出る所に出て、キッチリ10倍返しで返して貰うカラ、首洗って、覚悟シトキヤガレーッ!! オイ、与太っ!! 喧嘩ダッ!!コレカラ、奉行所駆け込んで、大岡様に訴えるゾーッ!!早くツイテ来ヤガレーッ!!」ッテ、スゴいケンマクで、顔、真っ赤にして、言ったんデスョ。

オッカナカッタネェー。

( コン時に、親方が切った「啖呵」は、語り草デスョ。スゴカッタネェー。

落語の「大工調べ」の元ネタに成ってヤンスョ。古今亭志ん朝師匠のが、アタイのお気に入りデヤス。親方、本当に、本物みたいにスゴイもの。)

そして、アタイが、ここ、お白州に居るのでアリマスョ。

アーア、センテンスがとっても長くて、アタイは、又又、クタビレタ。

親方、切れると、スゲェーから、「想い出消しの鐘」ナンザ、どデカい、ゲンノゥ持って来て、あたり構わずタタキマクッテ、ぶち壊しチマウでしょうョ、キット。ザマァー見やがれッテンダ、オトトイ来ヤガレーッ!!

ェート? アタイの話は、何でしたっけ?

アッ、ソウソウ、滝兄が、封印されてた三葉チャンの事、想い出しチマッタ話ダ!!

四葉チャンの話がキッカケで、封印はホドケたんだけど、鍵は開いても、扉は開いてネェー。

戻って来た想い出は、まだクリアーじゃネェー。だから最初は、「アッ、……三葉は オレに逢いに来たんだ。3年前の俺に……。」位だったんダヨ。

それが自転車コイで、山ン中入って、木漏れ陽が紅く染まっテク。

影もドンドン長くなって、タソガレ時が迫って来る。

カルデラは、もうチョットだョ。

スルト、鍵の解かれた扉が、大きく開いて来るョ。

もう「クリアーな映像とサウンドを、存分にお楽しみ下さい。」 のレベルだネ。

学校帰りの電車の中……….。

近づいて来る三葉チャンの顔が、ハッキリ見える。

声も聞こえる。

 

「滝……….君………。滝……..君…………。私の事……….覚えて……ナイ……….?……….。」

 

覚えてイルヨ!!、今度は!!

ここで、滝兄は、想い出したダケじゃなくて、三葉チャンの気持ちの全てが、解ったンダと思うョ。

そりゃあ、そうサ。

相手の身体で、ご飯食べて、トイレ行って……

コレって、同じ穴のムジナ、じゃネェーや,「同じ釜の飯を食べチャッタ仲」ッテのが、保育園ミテェにナッチマウほど、超高度な、「人付き合い」ですヨネ。

コリャ、二人ダケで宇宙船に乗って、太陽系、3ベン回ってワン、じゃネェーや,外宇宙で波乱万丈の末に帰還、満身創痍の宇宙船での大気圏再突入を、全人類が固唾を呑んで見守るッテー

…………話が遥か彼方にソレヤシタ。スイヤセン。

デモネ、身体の入れ替わりって、こうだヨネ。

滝兄の身体から、魂が抜ける。と、滝兄の身体はココで、チョイと死ぬヨ。

ケド、抜けた魂は、同じくチョイと死んでる三葉チャンの身体の中で、生き返る。

ソンデ、滝兄は、三葉チャンとして、生まれ替わるワケだよね。

三葉チャンも同じ。鏡のコッチとアッチ。

こうして、滝兄と三葉チャンは、「死んで、生き返って、生まれ替わる」又、「死んで、生き返って、生まれ替わる」を、何度も繰り返しチマッてるワケだよね。

コレってサァー、「生命」のナイショの根っコの所を、二人とも幾度も通って来たんジャネェーのカナ?

何見て来たんダロゥネェー。

滝兄が右からッテート、三葉チャンは左から、同時に互いにすれ違って入れ替わる。

デネ、アタイは、滝兄と三葉チャンが、双子ミテェーに成っチマッタと、思いヤシタ。(エッ?何デスカイ?後天的一卵性双生児?本当デスカイ?そんなの有るんデスカイ?エッ?比喩?ムツカシイネェー。)

アノネ、双子って、「共鳴」するデショ。音叉ミテェーに。

( 双子のジャンケンって、アイコばっか……なワケ無いデスカイ。)

滝兄と三葉チャンも、「死んで、生き返って、生まれ替わる」を、繰り返す内に、互いの身体も魂も、音叉ミテェーに共鳴し始めチマッタとアタイは思いヤシタ。

ダカラネ、滝兄は山道を自転車コギながら、三葉チャンが、どんな思いでタッタ独りで、東京まで、自分に逢いに来たか、今ジャ痛い程、解る。

第一、今、滝兄は、三葉チャンの身体なンダゼ。

いじらしくテ、切なくテ、たまんナカッタと、アタイは思うョ。滝兄のホホを、夕陽が更に、紅く熱く染めてユク。

滝兄は泣いていたンダョ。

視界が、涙で霞んでクル。

自転車、コケたのは、そのセイだと、アタイは思ったョ。

 

エーッ、少々ッテカ、大部長くなりましたが、滝兄の「想い出消しの封印」は、こうして、解けチマッテ、三葉チャンの事、チャンと想い出せたのでアリマスョ。

それでは、お奉行様、コレまでの、アタイの説明で、ご不明、お判りにならなかった点は、ゴザイマスでしょ……」

(側役人)「コレッ!! 与太!! 調子に乗るでナイ!!」

(奉行) 「ヨイヨイ。奉行の負けっぱなしジャノゥ。

デモノゥ、1つヨイか?「想い出消しの封印」を、解く鍵が、「時 ( タソガレ時 ) 」と、「場所」 (カルデラ ) の2つ、としたら 、本件 三葉の場合はドウなのジャ?

三葉はカルデラの麓に住むので、80点。タソガレ時は毎日来るので100点。つまりは、毎日毎日、封印は弛み続け、遂には解けて、滝くーんの事を想い出してシマウのではナイカね。ノー、与太君よ。ドウジャ?」

(与太郎)「アッ、アイ。お奉行様は、他人の話をチャンと聞かなキャ駄目ダイ!第3の鍵 (本当は1番大切かも知れネェーや。)  つまり「キッカケ」の事デェーッ!!

満点ジャなくても、封印はドンドン弛むケド、最初に「キッカケ」が無キャ解けはシネェーヤイ!

残念ですが、三葉チャンには、「キッカケ」が無いんデスョ。だからネ、三葉チャンは、滝兄の事、想い出すことは出来ネェ。

タダね!ココでアタイは思ったノデスョ。解けはシネェーけど、お奉行様の言う通り、滝兄に付いての「想い出の封印」は、毎日毎日弛むんダヨ。

スルト、どう成りますカネ?滝兄と入れ替わって暮らし、生きた日々の場所の「想い出」の中身は、封印され、消されてはイル。

ダケド、中身の映らない、輪カクだけは、三葉チャンの心の中で、毎日毎日、浮かび上がり、そして消えてゆく……….。

三葉チャンにとって、忘れチャいけない大事な人が、どこかに、居る。

その「 気配 」だけが、毎日毎日、浮かんでは、消えてゆく…..。

ダカラネ、大人になった三葉チャンが、故郷を離れた理由が、ココに有るンダネ。

三葉チャンは、都会にアコガレて、「東京」に行ったんジャないヨ!

滝兄の身体で暮らしていた、大事な滝兄が居た「場所」の「気配」に、心の底の方で引っ張られて、「その場所」、に行ったンダと、アタイは思ったョ。

ダカラ、大人の三葉チャンは、銀座でも渋谷でもない、「滝兄」で暮らした周辺に居るデショ。

アレは、偶然ジャネェーや。うまく出来テラァー。ソーは、思いまセンカネ、お奉行様!

( エッ?銀座や渋谷は、家賃が高いカラ無理?ソーなんデスカイ。)

但し、コレまで、アタイの話した事は、全て、アタイの仮の説明でアリまして、早い話しが、与太バナシでヤス。決して、エビデンス(※)を、伴ったモノではナイ事を、アラカジメお断りしちゃっトキマスよ。デネェーと、親方にオコラレラァー。

親方、オッカネェーゾーッ。

( ※ココで、チョイト、「エビデンス」の説明デスョ。

この前、親方が、親方のお師匠と、何か話してテ、アタイが脇で聞いてテ、

「親方、今度は、マンションの仕事デスカイ?」ッテ尋ねたら、

「ソレは、OOレジデンスだローガ。ソーじゃネェー。エビデンスだ。」ッテから、

アタイが、「ソレ、何デスカイ?」

親方「マー、平たく言ヤー、動かぬ証拠ミテェーなもんダローョ。」

アタイ「ジャー、横に動いチャウ証拠は、カニデンスですカイ?」ッテ言ったら、

親方に、コッピドク、怒られマシタ。コワかったネー。)

エーッと、何の話しダッケ?

アッ!ソウソウ、お奉行様の4度目、ン?3度目カナ?の間違いの話しダッ!」

(奉行)「4度目ジャヨ!与太郎君よ、貴公は、聞くと見るとジャ大違いのマサに標本ジャ ノー。奉行、負けっぱなしジャ!」

(側役人)「 ( アッ!与太が、「貴公」に、出世した!ウソォッ!お奉行様、ココで白旗か?ハタマタ反撃ナルか……?) 」

(奉行)「しかしノー、与太君ヨ。貴公は、「紅い組み紐」の一件を、どう考えるのジャ?

中坊の滝クーンから、本件三葉の記憶は全て消されていた、とシテも、滝クーンの左手首に、ズーッと巻き付けている「紅い組み紐」は、どうナノジャ?

本件三葉との入れ替わりの際、滝クーンが、本件三葉の「紅い組み紐」に、全く気づかないトハ、「ソレはネェーダローヨ!!」ダローヨ!!

そして、奉行が自ら再現フィルムした、「コレならソーダローヨ!!」がソーダローヨではないのカイ?」

(与太郎)「アッ、アイ。ソレは、「ソーナラネェーのダローヨ」デスョ。

理由は簡単。お奉行様の、「コレならソーダローヨ」には、エビデンスが無いんデスョ。

お奉行様の、「想像」デスョ。アタイみテェーのが、勝手にホザイてる分は、カマーやシネェーが、お奉行様が、「御裁き」スルのに、エビデンスが、無くっチャ、イケネェーヤィ!

アタイだって、お奉行様の言う事は、シゴク、もっともだト思ワァ!

ダケドね、滝兄の目の前に、三葉チャンの髪留めの、「紅い組み紐」が、突き付けラレルような場面は、この映画ニャ、全く見当たらネェーヤ。

ズルイっチャー、ズルイけど、「筋が通らネェー」の一歩手前だと、アタイは思うョ。

そうそう、一葉婆ッチャンの髪留めが、三葉チャンのと同じ蝶結びで、同じような紅い組み紐だったシーンも有ったケドネ、三葉チャンの想い出を消されチマッタ滝兄が、ソレを見逃しても、「ソンナの、気が付きませんデシタ。」ッテ言われりゃ、シャーネェーヤ。

「気付かぬノハ、いかにも不自然!」ジャ、全然ダメデェー!

「気付いてイタ事は、コレコレの証拠で、明々白々。気付かぬノハ、不自然どころかコレコレの理由で、無理デアル!観念セイッ!!」デナキャ、ダメデェー!

ソレをシネェーで、自分の都合のイイように想像して、「コレならソーダローョ。」テナ事を、お奉行様が言ってチャ、イケネェーヤイ!!

コンなコッチャ、無実の罪を着せられチマッタ人で、江戸の町は溢れカエっちゃッテ、バイオハザードみてぇーに成っチマワァー。 (ゾンビ、オッカナイネェ。イャだネェー。)

このゾンビの群れを大量発生させチマッタ元凶が、「このO町奉行所だった!」テナ事に成っタラ、この期に及んで、マスコミ殺到、「大スクープ、ゾンビ第一号は、滝兄だった!独占インタビュー10ページ!」「滝兄、スタジオ緊急生出演!コレが真相だ!」「金さん処分カウントダウン、大目付、本日2時、緊急会見!」テナ具合で、幕府の面目、丸ツブレ。ひいては、 日の本の、お国の面目、丸ツブレ。ツブレて、全ーン部、平らにナッチャッて、「見渡せば、山も凸凹も、なかりケリ……….。」 コリャ、殺風景の極みダネ。エーッと、下の句、何ダッケ? エッ?そんな下の句、有るワケ無い?ソウナンデスカイ。

アレッ?エーッ、……アタイの話し、何でしタッケ?

アッ!ソウダ、お奉行様の五度目、ン?四度目カナ?の間違いに、文句タレてタンだ!」

(奉行)「五度目ジャヨ!。マァ与太郎ョ。よくぞ申した。奉行、ボッコボゴで出る所ナイワ!」

(側役人)「 (本当ッお奉行様、ヤラレッ放し。大方の予想を裏切り、ココでタオルを投げるか?それとも、起死回生のカウンターを喰らわせ大逆転か?) 」

(奉行)「しかしノー。このお白州では、取り上げるツモリは無かったのジャガ、貴公の了見を、是非知りたく、尋ねる事にした。

……….他でも無い、彗星落下の大事件を、滝クーンが、スッキリサッパリ忘れている、一件ジャ。

「想い出消しの鐘」で、本件三葉との記憶が、滝クーンから一切消えた、としてもダナ、彗星落下は、その後に生じた事ではナイカ?まして、街の半分がホボ消失という大惨禍は、人類史上初の大事件ジャ。その調査研究は、世界規模となり、5年、10年で、済むハズはあるマイ。

その報道、情報の、嵐の中で暮らして来たハズの滝クーンが、

「エーッ?アノ時の惨劇の町ダッタンですか?チーッとも覚えて 無かった。」ジャー、

復活の判決主文、「ソレはネェーダローョ。」に、今度こそナルのでは、ネェースカねー。

のう、与太君よ、教えてくれマイカ?

(側役人)「 (オッ!気持ち悪ッ!お奉行様下手に出る一方、苦し紛れに、このお白州では、スルーのハズの事案を持ち出した。キッタネェー。今日は、珍百景のツルベ打ちダ!

で、与太君、貴公はどう出るのジャ? ( アッ、ウツッタ…… )

ンッ?……….ドウした?与太、答えナイノか?……….。 ) 」

 

与太郎は、珍しく口をつぐんで居る。大の苦手の「思案中」ダッ!

 

(与太郎)「 (個々の矛盾は、個別に撃破して行けば、勝機は見えるカモ……….!ダケド、この矛盾は、余りに大き過ぎるし、深過ぎる……….。今度バカリは、アタイの頭脳を持ッテしても、ダメかも知れナイ……….。」( って、ドッカで聞いたような、セリフだネ? )

柄にも無く、与太郎が悲観して、犬が尾を下げるように、首をウナダレ、沈んでユク……….。

……….お白州に、暗くドンヨリした空気が漂い始めた……….。

と、その時、全てを吹き払う、澄んだ一声が、お白州に響いた。

 

「待っターッ!!!」

 

続くーっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の名は。」と「天才バカボンのパパ」part1(part3 出来マシタ)

「君の名は。」 滝君は、天才バカボンのパパなのか?

(ネタバレどころか、バーレバレデス。映画を御覧になっていない方は、絶対に、読んではイケマセン!以上、危険情報のお知らせデシタ。)

 

傑作漫画「天才バカボン」の「パパ」の名セリフがコレです。

「忘れようとしても、決して思い出せないノダッ!コレで良いノダ!」

良くありませんッ!

こんな事が許されるのは、「バカボンのパパ」だけです。

しかし、本作の滝クーンは、まさに、「バカボンのパパ」 状態です。

次の2点で。

1番目。

彗星落下という、人類史上の大事件を、滝クーンが、スッキリサッパリ忘れチマッタ点 。(サジだらけなんで、スルーです。尚、サジは、投げるヨリも、置いた方が、ヨロシイヨウデ。当たると、結構、イテェーですヨ。)

2番目。

これ、ほとんど、ご指摘が無く、不思議でなりません。

これを、ズボリ、いやズバリ、あるいはネチネチと、指摘するのもナンですので、ここは  時代を越え、大岡様、いや遠山の金さんに出張って頂き、吟味といたしましょう……….。

速くも、時空は変わって、O町奉行所のお白州。敷かれたゴザに???状態で神妙にポケッと座っている、本作主人公、滝くーん。

(そして、後方に控えている謎の何者か………..。)

遠山の金さん、早くも登場。

(奉行) 「エーッ私が奉行の金さんです。エリートの大岡君と違って、ザックバランですから、大丈夫ですよ。滝くーんは、御神体の祠の前で、口噛み酒を飲んでヒックリ返った瞬間に、当奉行所特殊チームが身体確保、時空を瞬間移動させて、現在、ココに在りマス。ネッ!

エーッ、吟味が終わり次第、ヒックリ返った「瞬間」に戻しマスので、心配しないように。

勿論、ここでの記憶は、全て消去しマスから。

何ったって、このお白州は、君の映画なんて目ジャない位、何でもアリですからネェー。

さて、滝くーん。ここ迄の説明で、何かご不明、お分かりにならナイ点はゴザイますか?」

(滝) 「ハイ。お奉行様は、韓国の方ですか?」

(奉行) 「早速のご質問、有り難う御座います。お答えします。それでは遠山の「キム」さんにナッチャイますネ。違いマス。私は「きん」さんです。正しくは、遠山サエモンのジョウです。ジョウと言っても、特上、上、中、並の、上ではありません。(左右衛門之尉と書きます。)サエモンの並、とか、サエモンの特上は、頼まれてもアリませんョ。念の為。良いですか。それでは、吟味を始めマス!」

[奉行、改まって]

(奉行) 「OO滝、平成O年O月O日生まれ、OO高校2年、東京都O区O町O番在住。アナタは、ここ数週間、OO県O市糸守町OO在住の、OO高校2年、OO三葉と、睡りを契機として、その身体が相互に入れ替わり、当初は夢か?と思われたが、その後、諸点より、現実に身体が入れ替わっているのだと、確信するに至った。

しかし、その入れ替わりには、何と、3年の時間のズレが生じていた、と判明。アナタが入れ替わった本件三葉は、アナタの暮らす、平成28年ではなく、遡る3年前、かの彗星落下直前の平成25年O月に暮らす本件三葉であった。

以上、相違ナイですか?」

(滝) 「その通りです。」

(奉行) 「それでは尋ねます。アナタが右手首に二重巻にしている、ミサンガの様な紅いテープ状の物は、奉行には絹の組み紐の様に見えますが、それは何に使うのですか?」

(滝) 「これは、御守り替わりに、付けているものです。」

(奉行) 「滝くーん、アナタはその紅い組み紐を、通学時にも、バイト時にも、つまりは、ほとんど肌身離さず、着用している。ツマリは大事な物に、違いない。ソレは、どこで入手したのですか?何時からソレをしているのですか?」

(滝) 「これは、人からもらったような…….? 何時と言われても、結構、以前から………..?」

(奉行) 「何!それほど大事にしている物を、オヌシは余り覚えていない、というより、ほとんど思い出せない、と申すカ!」

(側役人) 「 (アッ、お奉行様の言葉使いが、時代劇風に変わった!皆さん、これからお奉行様が話す場面は、この映画をご覧になった、極めて少数派の小学生の良い子達も、全てお判りの事ナンですが、本題は、その後デスので、判り切っていても、しばし、ご容赦下さいネ。) 」

(奉行) 「エーッ、当奉行所の調べには、こうありマス。

時は今から3年前、それも彗星落下の大事件の1日前、当時中2の滝くーんは、学校を終えて、帰宅途中の混み合う電車の中で、勉強の暗記物をしていた所、アニメのヒロインが出来そうな美少女が、突然、滝くーんの隣りに迫って、名前を呼ばれた。と、ありマス。

その場面を、奉行が再現してみマス。

エーッ、オホン(…….少女の声で…….)

「滝……….君………。滝……君………..。私の事……、覚えて……..イナイ…….?」

ここで、滝ョ!オヌシのその時の態度は何ジャ!!!! 「何ダ、変な女?」ダトッ!! モッタイナイ!アリガタイ!ナサケナイ!。オヌシはアホか!バカか!マヌケか!ニホンノダンシか!テメェ!バカヤロ!コノヤロ!チキショー!ゼッタイニ、ユルセネェー!アホ!!バカ!マヌケ!!○△×※◎#×………..!!!!」

(側役人) 「お奉行様、全部カタカナにナッチャッテマスヨ!アッ!ウツッタ! コラッ!お奉行!お気を確かに!リセット!オン!」

奉行、我に帰り、深々と礼。

(奉行) 「皆様には、多大なご迷惑とご心配をお掛けして、又、大変お見苦しい所を……….しかし、…….ヤッパリ、テメェ!カンベンナラネェーゾ!!」

(側役人) 「リセット、オン!」

(奉行) 「ハッ!失礼致しました。吟味を続けます。 その美少女は、オヌシのつれナイ態度に、あきらめて「滝…….君…….」から離れ、電車を降りる。

その間際、オヌシもやっと我に帰り(奉行と一緒ジャノー)その少女を呼び止めておる。

そして、このセリフジャ!この映画のタイトルじゃナ。

「君の名前は!!」

すると美少女はその瞬間、覚悟を決めた様に、髪を結んでいた紅い組み紐を振りほどいて、オヌシに投げかけ同時に、精一杯の声で答える。

「私の!名前は!ミツハ!!」

滝くーん、オヌシと三葉が紅い糸で結ばれた瞬間ジャ。

そして、滝ョ!オヌシが今、その右手首に大事にグルリと巻いている、紅い組み紐の出所こそ、この場面で美少女に渡された物であり、その少女こそ、本件三葉に相違ナイ!!明々白々ジャー!!

(奉行が控えの役人に小声で尋ねる。)

(念の為に聞くネ。この時の紅い組み紐と、滝くーんが今してるのと、DNA鑑定は一致しているの?エッ?DNAジャありません?ソーナノ?何?良く聞こえない。組み紐の編み方、色目は、完全に一致しているの?YESorNO? YESネッ!OK,OK!)

[良い子の皆さん、お待たせしました。本題の始まり!]

(奉行) 「さて、問題は、ここからジャ!のう、滝ョ!今から数週間前、最初にオヌシと本件三葉の、身体入れ替わりが生じた際、オヌシはノートにこう書きなぐってオルナ。

「お前は誰ダーッ!!」と。間違いあるマイナ!」

(滝) 「間違いありません。」

(奉行) 「ハイッ!それでは、判決を下します!速いデショ。即決!何でもアリ!」

[奉行、改まって……….]

「主文。「それはネェーダローヨ!!!!」

以下、判決理由を述べます。

判決理由 その1。 顔

入れ替わりの初日、オヌシは、少女になった己の姿を確かめようと、鏡を見たな! その時、鏡に映った本件三葉の顔を、オヌシは100%スッキリ、サッパリ忘れていたトデモ申すカッ!オヌシが右手首に大事に巻いている、紅い組み紐の渡し主である、本件三葉の顔を!! それが許されるのは、世の中広しと言えども「天才バカボンのパパ」だけジャー!!

判決理由 その2。 名前

入れ替わりの初日、オヌシは、入れ替わった少女の名前で、何十回となく呼ばれておるハズジャ!

即ち、三葉(ミツハ!)、三葉(ミツハ!),三葉(ミツハ!),三葉(ミツハ!),三葉(ミツハ!),………..(アー、クタビレタ)…….とナッ!

のう滝くーんョ。3年前に、オヌシ自ら少女に聞いたのでアロウ、「君の名前は?!!」と。

そして少女は何と答えた?「個人情報は教えタカアリマセーン!」とでも申したか?

少女はハッキリ、精一杯の声で答えたでアロウ「名前は!ミツハ!!!」と。

オヌシの頭の中で、「ミ・ツ・ハ・」の名前は、100%アッサリ,スッパリ、どこに消えたと言うのジャー!!

「ピーン,ポーン,パーン……….O町奉行所からのお知らせです。滝くーんの頭の記憶の中で、「ミ・ツ・ハ・」の名前の行方が、判りません。「ミツ」は、一ニ三の「三」、「ハ」は、若葉の「葉」。お心当たりの方は、お近くの番所、又は奉行所まで、お知らせ下さい………..。」テナ事はセンゾ!アホタレが!バカボンのパパなのか、オヌシは!

判決理由 その3  運命の紅い組み紐

滝くーんは、運命的な出逢いをした、本件三葉の顔も名前も、100%想い出せないと申すのダナッ!

「だって3年も前の事だから、無理ーっ。」とでも申スカ!アー,ソーカイ。

しかしダナッ!オヌシが今、右手首に大事に巻いている、紅い組み紐をヨモヤ忘れた、トハ言ワセネーゾ!

(側役人) 「 (段々、言葉使いが乱暴にナッテ、カタカナが増えて来た。何ダカ、ヤバソウ。アッ!又ウツッタ!) 」

その出所こそ、本件三葉の髪止めの、紅い組み紐でアル事、当奉行所の調べで明白でアル。

彗星落下の前日、帰宅途中の電車の中で、本件三葉から紅い組み紐を手渡された事スラ、オヌシが、スッキリ,サッパリ忘れチマッタと仮に認めようジャネーカ。

それでもナァ、滝ョ、オヌシが本件三葉と入れ替わっていた、ここ数週間の間、オヌシの今、右手首に大事に巻きつけてアル、紅い組み紐と同一の物を、本件三葉がトレードマークとして、髪止めに使っている事に、全く気付かずに過ごせたとデモ申すノダナッ!

マッコト、相違ナイナッ!!

滝くーんョ、答えんノカ。

ここで、判決主文の再登場デス。「それは、ネェーダローヨ!!!」

ソーマデ、シラを切るナラ、奉行が「これなら、ソーダローヨ!!」の場面を示して進ぜよう。

エーッ、オッホン。

場面 A

入れ替わりの初日、本件三葉の身体になった滝くーんは、訳が解らす゛夢かと思っている。

それでも何とか制服に着替え、渋々、学校に行こうと、玄関に向かう。髪はバッサバサ。

その後から、見送りに来た祖母の一葉が、声を掛ける。

(一葉) 「チョイマチ!何だい、その髪は!ドーシタン、アンタ!いい若い娘が、そんな髪で表に出るモンじゃ無いョ。(妹の)四葉!いつもの姉ヤンの髪止めを取っといて゛。」

ランドセル姿の四葉は、玄関先で、もう靴を片足履いている。

(四葉) 「いやダー、学校遅れルー。」

(一葉) 「私シャ、コン娘の髪とかしとるケン、早ョ、持って来!」

[ 方言、メチャクチャです。]

四葉、仕方なく、ランドセルを背負ったまま、2階へ向かう。

一葉、三葉の髪をとかしながら、

(一葉) 「お前ン髪は、母さんの二葉に似て、猫っ毛のクセっ毛ヤキ、ソンデン、マッコト綺麗な黒髪や……..、大事にせにゃあイカン。」

四葉が、階段をドタバタ駆け下りて来る。手には三葉の紅い組み紐。一葉に渡そうとする。

(四葉) 「 ホイ、バッチャン!」

(一葉) 「私シャ手が一杯サケ、四葉、アンタが渡してヤリ。」

四葉は、玄関先に降りて、乱暴に靴を履くと、座っている三葉の前に立つ。

(四葉) 「ホイ!バカ姉 (バカネエ)!コレッ!」

眼前にコレ見よガシに差し出された、紅い組み紐を見て、滝 (三葉)が言葉を失う。

(四葉)  「ホレ!バカ姉、何シトル!取らんカッ!」

(滝 [三葉] ) 「コレ ……….. 俺の ………..(組み紐 ……..) …….!」

(四葉) 「何が俺のジャ! アタリ前!ア・ン・タ・ン・ジャ!!」

滝 (三葉)、無理やり掴まされた、紅い組み紐を握ったまま、反応がない。

(四葉) 「ンモーッ!先行くデッ!遅刻や!」

四葉、玄関の戸を開けっ放して、走り去る。  足音が遠のく…。

(一葉)  「コレッ、チャンと閉めていかんカイ……….。」

一葉の声が滝 (三葉) からフーッと、遠のいて行く ………. 同時に滝 (三葉)の視界の全てが、白く霞んでゆく。

フラッシュバック 。

白い霞の向こうに、開いた電車の扉が現れる。

その向こうに、何かを話しかけている少女 …… 髪を紅い組み紐で結んでいる。

顔はボヤケて解らないが、口だけが動いている。

声は、届かない。

無音の世界 ……………..。

フリーズしている滝 (三葉)に、一葉が気付いて、声を掛ける。

(一葉)「ドーシたんネ、三葉 (ミ・ツ・ハ・)!何かアッタンカ?」

滝 (三葉)、一瞬、我に帰る。

一葉の言葉が刺さる。

(滝)「 (ミ・ツ・ハ・……………? 俺の名前 …………….? ……….!! )

次の瞬間、再び視界が白く霞んでゆく。

今度は、すぐ目の前に、独りで立っている少女。

顔形はクリアだ。

何も無い白い世界で、三葉が2人、向かい合って、立っている。

(滝 [三葉 ] )「 …………….鏡を見テイルノカ? …………!イヤ、違ウ…………?

今のオレは ………….、君ハ …………3年前ノ ………..アノ時ノ ………. 君カ ……….? 」

少女は、決心したように、髪を結んでいた紅い組み紐を解くと、もう一人の三葉(滝)、の右手首に結び付ける。美しい蝶の結び。

その右手にソッと、両手を添える。

そして、名前を呼ぶ。

「 ……….. 滝 ………..君 。」

瞬間、もう一人の三葉 (滝) の身体が、滝 本人に戻っている。

何も無い白い世界。

向き合って立っている滝と少女。

少女が滝に語りかける。

声が、ハッキリ聞こえる。

「私の名前は ………..ミ・ツ・ハ・………..!!! 」

(滝)「 (……….ソウダッタノカ!! ) 」

全てを悟る、滝くーん。

(滝)「 (オレは、3年前に逢いに来てくれた、アノ三葉になってる夢を見ているのか ……….!! ) 」

途端、我に帰る、滝くーん。

右手首には、紅い組み紐を結んでくれた、三葉の指の温もりが残っている。

まだ焦点が定まっていない、滝くーん ( 三葉 ) の様子に、一葉が気付く。

(一葉)「三葉、本当にドーシタン?しっかりセント ……….!」

一葉が髪から視線を落とすと、三葉 ( 滝 ) の手首に紅い組み紐が、蝶の形に結び付いているのに気付く。

(一葉 )「オヤ?、お前、ソレ独りで結んダンカ?………..」

(滝 [ 三葉 ] )「 ………..オバアサン ……….」

滝( 三葉 ) が、一葉に顔を向ける。

(一葉) 「何カネ、三葉。ウン?……….お前 ……….今、夢見とったナ ………..? 」

次の瞬間、ハッ!となる一葉。

(一葉)「三葉 …………アンタは ………….誰ジャ ……….?…..!! 」

 

以上、全巻の終わりジャー。ドウジャ!「これなら、ソーダローヨ!」にナルダローョ!

場面BもCもDもあるが、チョイとクタビレタので省略ジャ。

のう、滝くーんョ!

コレでも知らぬ存ぜぬを通すのなら、オイラはいざ知ず、背中の桜吹雪のイレズミが、黙ッチャイネーゼ!!

ドーデー!滝くーんョー!覚悟を決めて、答えヤガレ!」

(滝)「ハイッ!お奉行様は、暴力団関係の方デスカ?

お奉行様の背中のイレズミは、シャベルのデスカ?」

(奉行)「早速のご質問、有り難うゴザイマス。それでは、お答えシマス。エーッ、奉行の時代のイレズミは、一般に、消防署員、ジャナクテ、火消しの兄さん達デスネ。 又、鳶(トビ) 職のお兄さん達も ………..テユーカ、待テ、シバシ待タレヨ!コレ、変デショ! 何で奉行が答えニャいかんノダ!聞いテルのは、奉行の方デショーガ!!

第一、何ダ、滝、オヌシの質問は!

背中の桜吹雪のイレズミはシャベルのか?ダト?

エーッ。それが結構シャベルんです。オハコは桜つながりで落語の「長屋の花見」で、2番目が「愛宕山」………..テユーカ、ソンナ、ワケ、ネーダロー!!

黙って聞イテリャ、イーキにナリヤガッテ。

自慢ジャネーガ、オイラハ、奉行所始マッテ以来の切れ者の評判が、まかり通ってイルンダゼー!コーナッタラ、ブチ切レルシカ、ネーナ!

ヤイ!滝!コノヤロー!テメェー …………….テカ………..アレッ?……….少々お待ち下さい ……….。

評判の「切れ者」って、コッチの「 (ブチ) 切れ者」ナノ?「 超頭イイなーの、切れ者」の方ジャナイノ?

エッ?「ソッチは大岡様の方?」ソウナノ?本当?本当に本当?知ラナカッターッ………..!!

無念の極みジャー!! エーイッ!コーナリャドーデモイーヤ!!」

(側役人)「 (ヤバイ!お奉行様、タブーに気付いた。確実にコワレル。オッ!お奉行様の瞳が、怒りに満ちている。こう成ったら、もう誰にも止められない。お奉行様第3形態ダ!

コノママで良イノカ?イヤ、ヨクナイ。デハ、ドウスレバ……….アッ、又ウツッタ!) 」

摩訶不思議な緊張感に支配されようとする、お白州。

ソコに突如響く、何ともシマリの無い一声。

「おっ…おぶぎょうさま…‥。おぶぎょうさまー!!」

(奉行)「ンッ?誰ジャ、拙者ヲ呼ぶのは?ソレも、ひらがなデ!エーッ? エーと、どなたデスカ?」

(謎の男)「アッ、アイ。」

(側役人)「(オッ!お奉行様の瞳から、怒りの色が消えた!何という慈しみの「アイ」ジャー!! 助かったー!!)

お奉行様に申し上げます。かの者は、この次に大岡様のお裁きとなる、「大工調べ」の訴え人、OO町に住まいます、大工の「与太朗」めに、ゴザイマス。」

風雲急を告げる、O町奉行所、お白州。

突如、現れた、落語の名キャラ「与太朗」

この与太に「金さん」ボッコボコにされ、与太与太、いや、ヨタヨタと成る、お馴染み(な訳無いデスカ)「金さんvs.与太朗」の一席 、本日は、チョイと、クタビレマシタので、此処までと致します。

続くーッ!!  有り難うゴザイました。有り難うゴザイました。