墨で一筆書きの獅子(ライオン)が、画面一杯に雄々しく躍動し、咆哮すると次の瞬間、獅子舞の頭(かしら)に変わる—-。
中国大陸での獅子舞の本質(舞踊、音楽、そして武芸の合体)と歴史が簡潔に語られる—-。
『斬新の極み』の美しいタイトルに魅了されマス。
そして、再び墨の獅子(ライオン)が画面から観客側に飛び出そうとする瞬間、画像はフルカラーのCG映像の痩せコケた野良猫と入れ替わる。路地裏を進み歩く向こうの路に、自転車を思い切り飛ばす、主人公の少年が現れる—-。
コノ映画は、『痩せた野良猫である少年』が、躓き倒れナガラも立ち上がり、『雄々しい獅子(ライオン)の少年』に育つ、見事な物語です。
そして、心を打つ美しい場面は、両の手指でも足りマセン。
巻頭、自転車を飛ばす少年を映し出す『風景』は、少年が村や街に暮らす人々の間だけで無く、草や木々に包まれた『美しい世界』で息づいて居る事が数カットで明示されマス。
最後に、冒頭の、もう1場面。
木綿(きわた)の紅い花が、閑かに咲き誇る林の丘に、少年が立つシーン。
(無知な私は、木綿(きわた)を初めて知りました。)
桜の花の10倍は有ろう大輪の紅い花が枝一杯に咲き乱れる木綿の樹—-。
運命のイタズラで出逢った『達人の少女』から、獅子舞の頭(かしら)を譲り受けた少年が問いかけマス。
「僕なんかに、獅子が舞えるノか?」
ソノ少年の頭に、木綿(きわた)の紅い花がフーッと落ちて来る—-。
その様を見て、少女が答える。
「キッと出来るワッ!『英雄の樹』とも呼ばれる木綿の花が君を選んだ!」
コウして『痩せた野良猫の少年』は、『雄々しい獅子(ライオン)の少年』への険しい道を歩み始めマス。
木綿の樹は、その間の全てに於いて、少年を、蔭で見守り、蔭で支え続け、そしてコノ映画の最後のクライマックスで、ソノ姿を現すのデス!
このアニメ映画を味わう為に、何らの教養も知性も必要有りマセン。
ソレは、天地を紅く染め上げる夕焼けの美しさを味わう為に、何らの知性も教養も必要無い事と同じデス。
完全なネタばれデスが、文字で綴った予告編と思い、ご容赦下さい。
サア、珠玉の本篇の始まり始まりーッ!